残雪の宝剣岳〜東壁中央稜〜

2025.04.12(土) 快晴のち曇り
メンバー: 土屋・鈴木(拓)
文責: 鈴木拓海

以前よりトライしてみたかった中央アルプス・宝剣岳の東面を残雪期に登ってきた。中央稜を登る予定だったが、思いがけずバリエーションルートを登ることとなった。自分にとっては2024/2025最後の雪山で、全てのピッチをリードし、充実したクライミングで今シーズンを終えることができた。

決行日、眠い目をこすりながら、菅の台からバスとロープウェイで千畳敷駅へ移動。08:50頃、身の回りの準備を済ませて、千畳敷カールに足を踏み入れた。この時点でハッキリと見える宝剣岳東面に笑みを隠せなかった。天気は快晴で、雪もそれなりについているのが見えた。(これで楽しくないわけがない)。山の上は一面白銀の世界で、一気に目が覚めた。既に八丁坂を登る登山客の列からはみ出て、宝剣岳東面を目指しているパーティがいたので、彼らのトレースのあとをついて行った。



壁に近づくと、2P目を登っている3人パーティの姿が見えた。さらに壁を目指して歩いている最中、ガガガッという音がしたので壁を見上げると、フォローのクライマーがロープにぶら下がって、ゆれていた。(まじかよ〜自分に登れるかなと急に不安になる)。

取り付き付近の樹木にセルフビレイをして、登攀準備を始めた。トレースをつけてくれた先行パーティに先を譲るも、待っていても仕方ないので登れそうなラインを登ることにした。「中央稜の1P目は2ルートぐらい登られてるよな」と思いつつ、左の方へトラバースして壁に取り付いた。



10時前に登攀開始。割と立っている岩にへばりついている凍っていない草付きに、ダブルアックスで身体を上げようとすると、左手のアックスが土と共に剥がれた。身体をゆっくりとまた下げながら、どうすんだこれ・・・と逡巡するも、他に登れそうなところはないので、「えいや」で思い切って身体をもう一度あげた。その後は、草付きがなくなり、完全なスラブ。ハーケンが連打されていたので、スリングをかけて荷重をかけてトラバースをしつつ稜線めがけて登った。あとからわかったことだが、左フランケルートに入ってしまったらしい。ハーケンが見当たらなくなり、再び現れた草付きをダブルアックスで越えた。1P目はデカイ木で終了。

先行パーティのリードに合流し、お互いのルートの感想を話し合った。フォローの土屋さんも無事登ってきた。先行パーティが先に2P目を登り始めたが、その右側に顕著なクラックが走っていたので、僕らも並走してこちらのクラックを目指して取り付いた。まずは出だし、薄く雪が載ったスラブを滑らないように丁寧に足置きして登った。右側にクラックがあるが中の岩はボロボロで全然安心できなかった。少し登ると小ハングがあり、目の前にカムをセットできたので一安心。ただここからどうやって上がればいいのかわからず・・・スリングでアブミを作って身体を上げるも、クラックは広すぎて体勢も悪かった。しばらく逡巡し(再び)、意を決して再度身体を上げ、凹角状の左壁にくっついているコケにアックスを刺し、足をスリングから外した・・・。この瞬間、ビリビリッと脳に緊張が走るが、足をハング上のクラックに入れ、アックスは剥がれず持ち堪えてくれた。その後はフィストサイズのクラックと、左壁のコケを使いながら雪の載ったハイマツまで登った。ハイマツ登りは大得意範囲。ハイマツをつかみ、雪にアックスを刺して、ビレイ点から見えていた雪の傘を乗越した。その後は快適な雪面を登り、木で終了。



再び先行パーティのリードと合流(先行パーティは2P目を2パートに分けて登った)した。土屋さんの方が先に登ってきたので、僕らの方が先に3P目オケラクラックを登らせてもらった。本来中央稜はオケラクラックが核心と言われている。ただ、エイドを交えても奮闘的な1-2P目を越えていたので、緩い傾斜でカムがしっかり入るオケラクラックは容易に感じた。クラックの中にグサグサの雪がつまっていて、アックスが刺さりにくいのが登りづらくさせていたが、フットジャムをしっかりと決めて着実に登った。終了点はカムで作った。



最終4P目は初めに草付きを登ると、二本足で歩ける雪稜に変わる。今日のクライミングを思い返しながら、山頂に立った。空は少し雲がかかってきていた。身支度を整えて山荘方面へ下り、八丁坂を降りた。



奮闘的なパートがあったとはいえ、中央稜は4Pしかないので、「まだまだ登り足りないなあ」と消化不良な気持ちを抱えていた。そのためか、何度も東面を振り返り、オケラクラックを登っているパーティ(先行パーティ)を見て、「楽しかった」、「良かった」、と何度も土屋さんと話していた気がする。

宝剣岳はまだまだ登りたいルートがたくさんある。来年は厳冬期にチャレンジしたい。

2024年度の冬山

2024年は色々と変化の多い年だった。
学校を卒業し、就職し、引っ越しなどなど、生活が大きく変わった。
そんなわけで日々忙しく山に行く時間も減ってしまって、、、

なんてことにはならず、研究室とバイトから解放され、休みの日に思う存分山へ行けるように。自分の記録を見返すと2024年は合計54日山へ行っていたようだが、HPで報告した山行は3件だけ。定期的に更新し冬壁をやる人間がいることも主張しておかねば、ってことで2024年度冬シーズンの山行を振り返ってみようと思う。

12/1 八ヶ岳 赤岳主稜
シーズン初めで雪不足を心配していたが、行ってみたら山は真っ白。天気は快晴。珍しく風が弱く非常に快適で楽しい冬壁シーズンインとなった。

12/14 八ヶ岳 峰の松目沢(南西沢)
これは帰ってから知ったことだが、峰の松目沢は南東沢、南西沢と2つあり、メジャーなのは南東沢。今回はマイナーな南西沢を登ったが、ところどころロープを使いつつ沢を詰めていった。こちらもアイスの足慣らしにはちょうどよいルートだった。

12/15 八ヶ岳 裏同心ルンゼ〜小同心クラック
暗いうちから裏同心ルンゼを登り、小同心クラックへと継続した。裏同心ルンゼは初めてだったが、登攀時はほぼ真っ暗だったので気がついたら終了していた、みたいな感じに。小同心クラックへ取り付く頃にはあたりは真っ白で風が強く、極寒。それでもアイゼンアックスを駆使し、一手一手ロープを伸ばすクライミングは非常に楽しかった。色々と反省点も多かったが、気づきの多い充実した山行だった。

12/29-30 常念岳 東尾根
年末の天気予報があまりよろしくないため当初予定してた計画を変更し、常念へ。初日はひたすらラッセルし幕営適地まで。2日目に山頂を踏んで下山した。

2025/1/3 八ヶ岳 峰の松目沢(南東沢)
1ヶ月前に行っていないほうの峰の松目沢に。少し氷が薄いところもあったがアックスがよく刺さる。最後の90度、10mほどの滝はなかなか奮闘的であった。

1/4 八ヶ岳 赤岳〜硫黄岳
翌日に長野でスキーをする予定を立てていたため家に帰るのがもったいなく感じ、一人山に残り南八ヶ岳を歩いた。クライミングに慣れてしまったせいか、やはり山は誰かと行くほうが楽しめると感じた。

1/24 八ヶ岳 中山尾根
この週は気温が高かったようで、1pはほぼドライツーリングだった。じゃんけんに勝ち核心ピッチをリードするつもりで行ったがパートナーが2pつなげて登ってしまった、、、
1pのフェースほうが難しく感じたからまあいいか。

1/25 広河原沢3ルンゼ
パートナーがテント代を払いたくない、ということでわざわざ一旦下山して隣の広河原沢に(笑)アプローチが長いせいか、はたまた天気予報が芳しくないせいか南稜含め誰も人がいなかった。雪で埋まっている滝が多くロープを出さずに終わるんじゃないかと思っていたが、最後の最後に激悪Vアイスが出てきて叫びながら登った記憶がある。パートナーいわく摩利支天大滝より悪かったそうな、、、

1/31-2/2 宝剣岳 極楽尾根
人生初の中央アルプス。極楽尾根の登攀日は6時前行動開始、20時テント戻りと、なかなかハードな山行だった。山行記録をHPに載せようと途中までは作成しているのだが、、、
長く、険しく、かっこいい尾根だった。

2/15 谷川岳 一の倉沢、幽ノ沢(偵察)
幽ノ沢F沢を登ろうとしていたが気温が高く、雪崩の危険性が高いため中止し偵察という名の谷川観光。一ノ倉沢出合にテントを張りダラダラと本を読んだり酒を飲んだりしながら雪崩等を観察しようという目論見であった。結局雪崩は全然発生しなかったが、明るい時間にルート、地形、取り付き、地点などを確認できたので来シーズンまたトライしたい。
この谷は何時来ても美しく、恐ろしく、魅力的だ。

2/16 谷川岳 西黒尾根
せっかく大きなザック持ってるし歩荷でもしましょう!ってことで到底日帰りとは思えないクソデカ装備を背負って西黒尾根を登った。本を10冊も持って山を登ったのは当然初めて。前日の偵察時の暇つぶしのために山を渡る全巻、トポ等をザックに入れていた。スキーヤー、ボーダーが多く来シーズンはスキーもやりたいな〜などと考えていた。

3/8-9 赤沢岳 大スバリ沢奥壁
晩冬〜春のクライミングコンビニと呼ばれている(らしい?)赤沢岳へ。冬季クライミングの本によるとテント場までは3〜4時間で、気合を入れれば日帰りも可能だそう。しかし行ってみると駐車場からテント場までは7時間以上かかったため登攀は2日目のみ。左岩稜正面チムニールートに取り付いたが途中敗退という結果に。2泊以上かけてじっくり登りたい岩場だった。

ひとまず今年の冬山は終わり。(残雪期はちょこちょこ行こうと思っているが、、、)来シーズンはスキーをしながら山を歩いたり、担いで登ったりしたいと考えている。

谷川岳 一ノ倉沢3ルンゼ

 10月末に、今年一番やりたかった一ノ倉の3ルンゼへ行ってきた.
 10月中旬にも計画を立てていたが,天気等のコンディションを理由に中止に.今週末は小川山,瑞牆で遊ぼうかと考えていたが木,金,土,日と晴れの予報.先週末は雪もチラついていたようなのでここが今年最後のチャンスだと思い,金曜日に3ルンゼへ行くことを決めた.

 いつも通り夜明け前にインフォメーションセンターを出発.雨は降っていないと思っていたが,一ノ倉出合付近のアスファルトが濡れている・・・ 霧と湿度のせいだと自分に言い聞かせながら一ノ倉に入る.

烏帽子スラブの奥に3ルンゼが見える


 雪渓が完全になくなってからの一ノ倉は初めてだったが,アプローチの踏み跡はしっかりしており,ヒョングリ滝前後もフィックスロープがあり大安心.雪渓がなくなった一ノ倉沢の深さには驚いた.
 南稜テラスから本谷へ降りる道は,ぼろぼろのフィックスロープがありなんとなくラインが見えた.ビレイしながらトラバースしたら,4ルンゼF滝はすぐそこに.

南稜テラスから本谷バンドへ
南稜テラスから本谷へ(右上が南稜テラス)

1P ルンゼ
この時はF滝がそれだとわからず,2ルンゼ側を少し登り水流を巻こうと考えた.コンテで簡単な岩登りをし,ボルトがあるところまで登る.

2P 草付き
ここで少し違うんじゃないかと思い,4ルンゼ方面へトラバース.草付きとぼろい岩がいやらしかったが,F滝上に戻った.

3P ~4ルンゼF1下 ルンゼ
左のバンドが悪そうに見えたため,4ルンゼを登った.水流の落ちるCS滝(これが4ルンゼF1?)手前まで.

F滝上から4ルンゼを見上げる


4P CS滝から草付き
濡れながらCS滝を越すと3ルンゼがよく見えた.ルンゼ右側の草付きを登り,細いブッシュをかき集めピッチを切る.ここでようやくトポ通りのラインに戻ったかな?

5P スラブ
スラブは岩の上に砂利やら草付きが乗っており,プロテクションを決めるにもクラック内の泥をほじくり返したりと余計に時間がかかる.水線を攻めるほうが圧倒的に楽だったため,濡れながらF2下まで.

6P F2
水流があり残置ハーケンの腐食が激しいうえ,苔でヌメヌメのためかなり緊張する.落石がルンゼ内で跳ね回るためビレイヤーも気が抜けない.

F2を登る


7P スラブ
F2からF3下まで.ほぼ歩き

F2上からF3を見上げる


8P F3
凹角左でピッチを切ったため,チムニー下を右にトラバースしフェースへ.ここも水流あり苔だらけで緊張する.チムニー上まで行くと左に見えた残置アルパインヌンチャクに導かれて登る.(ここで直登した方が簡単だったかも・・・)ルンゼ左側は岩質が全然異なりプロテクションも取れほとんど取れず,かなり緊張した.

F3中間部をトラバース


9~11P スラブ
難しくはないが泥交じりの草付きが乗った岩が怖く,スタカットで上部岩壁基部まで.相変わらず支点は取りにくい.

12~13P 草付きスラブ
上部岩壁沿いを詰めたのち,リッジへ上がる.プロテクションの取りにくく,泥と草付きの乗った岩と,それにより濡れたシューズのせいで終始緊張する.カラッとしてたらルンゼ中央部をサクサク登ることができたのかなと感じた.日没が近づき焦る気持ちをおさえつつ,慎重にリッジへ上がると国境稜線が見えた.

悪名高い上部草付帯からリッジへ

~国境稜線 草付きリッジ
コンテに切り替え,熊笹をつかみながらひたすら藪漕ぎ.一か所だけ露岩を超えるためにスタカットでビレイした.国境稜線とともに日没が近づき,うっすらと見える稜線へ向けてがむしゃらに藪をこぐ.小一時間ほど藪漕ぎをすると傾斜が緩み,日没ギリギリに稜線へ抜けることができた.茜色に染まる稜線を見ながら,これまでロクに休憩をとっていなかったことを思い出し,水分と食料を腹に詰め込む.評判は聞いていたが,ダイレクトに国境稜線へ突き上げた達成感は格別であった.

2・3ルンゼ中間リッジへ上がる
国境稜線まであと少し

 1日を通してトラブルがあったわけでもなく,大きなルートミスもなかったがとにかく支点をとるのに時間がかかった.水流があり濡れていたことも時間がかかった原因の一つと考えるが,やはり支点構築のスピードが遅く,未熟さを実感.(支点をとる場所を探す目・適したプロテクションの判断等,ゲレンデでは培えない技術の必要性を強く感じた)

 課題も多く出てきたが,一ノ倉沢を最深部から稜線まで突き上げることができ,非常に充実した山行となった.

以下,所要時間(参考)
04:00 インフォメーションセンター駐車場
05:00 一ノ倉沢出合
07:20 F滝
12:00 F2
13:00 F3
16:40 2・3ルンゼ中間リッジ
17:30 国境稜線
20:20 インフォメーションセンター駐車場

記・武田

前穂高岳の岩場 松高ルート・北条=新村ルート

お盆の連休を利用し,武田他1名(会外)で前穂高東面の岩場へ行った.

初日は上高地から奥又白池まで.奥又白池は前穂高東面の展望が非常に良くルートの観察ができ,快適な場所であったが,沢からは昼夜を問わず落石の音が響いていた.(焚火跡が残っていたのが少し残念・・・)

4峰正面壁

2日目は4峰正面壁,松高ルート~前穂北尾根を登った.
奥又尾根を登り,岩が出てくるあたりでトラバースできそうな踏み跡を見つけてそれを辿る.A沢のガレのトラバース,B沢の雪渓をトラバースし,C沢CS滝まで詰めた後T1へ.不安定なガレに苦戦し,池から2時間半程度.落石も頻発しているので非常に神経を使った.
以下,松高ルート詳細

1~2P 草付きのルンゼを辿りながら高度を上げていく.松高ハング下までトポだと3ピッチだったが,2ピッチで登った.
3P スリングの垂れ下がる松高ハング(というより垂壁?)を越える.その後の凹角の方が悪かった気がするが,特に不安に感じる難しさではなかったと思う.
4P いきなりハング越えから始まり,ハンドサイズのきれいなクラックの走る岩を右から回り込んで越えてもう少し登った.
5P 簡単な岩登りをして緩傾斜帯に入り,ロープを目いっぱい伸ばす.その後は緩傾斜帯の踏み跡を辿り北尾根へ.
そこからは北尾根を継続して登り,A沢,奥又尾根を下降したが,ここでかなり時間を使い,途中からヘッデン下山となった.特にA沢はガレと雪渓を懸垂しつつの下降となり,時間を取られた.

06:00 奥又白池
08:30 松高ルート取付き
12:00 北尾根縦走路
16:00 前穂高頂上
19:00 踏替点(2つ目)
19:30 奥又白池

下山が遅くなり疲労もたまっていたので,3日目は休息日とし,4日目は北条=新村ルートへ.松高ルートとアプローチがほぼ同じなので,迷うことなく1時間半程度で取付きへ.以下,ルート詳細

1P 凹角の草付きからフェースを登るが,松高ルートより岩が不安定で,プロテクションを決めやすい場所を探すのに苦労する.しかし,1P終了点にはピカピカのペツルのハンガーボルトが.ロープいっぱいまで伸ばしたかったが,足元も安定しているのでここでピッチを切る.
2P 階段状で登りやすいが,やはりプロテクションは決めづらい登りが続く.チムニー状の岩の下にまたきれいなハンガーボルトがあったのでここでピッチを切った.
3P チムニー状の岩が60m近く続く.流れが悪いので途中でピッチを切ろうとしたが,(ピッチを切って青白ハングをリードするつもりだった)狭く支点も心もとないので青白ハング下までロープを伸ばした.ここはハンガーボルトはないが,クラックが豊富なのでカムとナッツで安定したビレイ点を構築できた.
4P 本日のハイライト,青白ハング.1手ごとにあるんじゃないかというくらい残置スリングが多数垂れ下がっている.松高ハングとは異なり,高度感満点のハングだった.重荷と不安定な岩にビビり,情けないがスリングをつかみつつハングを超える.ハングちょいうえと,バンド上にハンガーボルトがあった.
5P バンドのトラバース~カンテを登る.難しくはないが支点の取りにくく高度感満点のトラバースにビビり,カンテを越えて浮石だらけのテラスに.相変わらず岩が脆いのでクラック内の泥を掻き出しハーケンを打ち込み,カムと残置も使いつつピッチを切る.
6P フェース~ハイマツ登り.60mいっぱいまでロープを伸ばし,さらに少し登ると緩傾斜帯へ.
北尾根を登るとまた時間がかかるので,今回は5,6のコル経由で下降した.

05:00 奥又白池
06:30 北条=新村ルート取付き
11:00 北尾根縦走路
13:30 奥又白池

当初の予定では前穂東壁:北壁~Aフェースの登攀や,滝谷へ移動してのクライミングも考えていたが,天候悪化によりクライミングはここまでとし,5日目に下山.明神橋手前でツキノワグマと遭遇した.
我々が居る間,奥又白池には他に誰も来なかったが,4峰正面壁は最近でもクライマーが訪れているようだった.(踏み跡は探せば見つけられたし,A沢下降用の残置懸垂支点もきれいなものが多かった.)
東壁へはC沢を詰めてアプローチできるかなとも考えていたが,落石が非常に多く,涸沢ー3,4のコルからのアプローチでないと厳しいかな・・・
(参考:改定 日本の岩場 白山書房)

予定通りのルートは登れなかったが,前穂高の岩場を知ることができ,充実した山行だった.

記:武田

T1へ向かう
松高ルート1P
奥又白池に映る前穂高北尾根
奥又白池BC

鳥帽子沢奥壁南稜~国境稜線

 6月7日,武田,瀧川,他1名で一ノ倉沢 烏帽子沢奥壁南稜~国境稜線~谷川頂上を繋げて歩いてきた.

 金曜夜に自宅を出発し,AM1:00頃インフォメーションセンターに到着.2時間ほど仮眠してから出発.人気ルートのため渋滞を避けるため早めの出発としたが,既に駐車場では他のクライマー達も準備を始めていた.急いで一ノ倉沢を目指す.
 テールリッジを目指し設計を歩いていると,100mほど先にツキノワグマが見え,一瞬熊敗退という言葉が頭をよぎるが,衝立前沢方面へと消えていった.ビビりつつもテールリッジへ向かう.
 なんとか南稜テラスへ一番乗りで到着し,前半は瀧川さんがリード.最後2ピッチを譲ってもらい武田がリードした.
 難なく終了点へ到着し,そこからは岩混じりの草付きでロープを使いつつ一ノ倉尾根へ.この日は南稜から国境稜線を目指す人が他に2パーティーも(!)おり,すぐに追いついてきた彼らはロープを使わず尾根を目指していたため,ここで我々を追い抜いて行った.(地元の山岳会とのことなので初めてではないのかも?)我々は初めてなので安全第一,ということで稜線へ出るまではロープを使った.
 一ノ倉尾根へ出てからは藪漕ぎをしつつ比較的明瞭な踏み跡を辿る.5ルンゼの頭は先行パーティーもロープを出しており,順番待ちをしつつロープをつける.そこまで難しくなさそうだったためアプローチシューズで登ったが,浮石と不安定な草付きが多く,緊張する.その後もコンテを交えつつ最後は背丈弱の藪を漕ぎとなった.国境稜線へ出ると緊張が解け,安全圏に出た安堵感で思わず倒れこんだ.
 下山はロープウェイの予定だったが,ここまで来たら自分の足で降りたいと感じたので,瀧川さんを説得し西黒尾根を下降.ツルツルの岩と鎖場で疲れたが,PM16:00頃には下山した.
 クライミング,藪漕ぎ,コンテ,稜線歩きとアルパインクライミングの楽しさを詰め込んだ1日となった.

【時間】
03:40 インフォメーションセンター
04:20 一ノ倉沢出合
05:40 南稜テラス
08:50 南稜終了点
10:00 一ノ倉尾根
10:50 5ルンゼの頭基部
12:20 国境稜線・一ノ倉岳
16:00 登山指導センター

記・武田

 

インドヒマラヤの登山報告

R24

計画が始まったのは1年前、当初はインドヒマラヤのヒマチャールプラディシュのアイガー北壁に似ている6500mの山を考えていました。その山に合わせ冬はミックスルートなどを登り、春から夏にかけては富士山に頻繁に登り体力トレーニングなどを行いました。

しかし出発直前、インド国内の大雨のため当初予定していた山への道路が寸断され、急遽、目標の山を変更するしかありませんでした。そこで選んだのが2017年にも訪れた事のあるザンスカール地方でした。慌ただしくGoogleearthで6000mの山を選び直し出発することになりました。

世界的な天候の変化なので仕方ありませんが、ヒマラヤ遠征を多く行ってきましたが、直前での目標の変更は初めての経験でした。

私たちが挑戦したR24(標高6100m?)は規模は大きくなく傾斜も強くありませんが、美しい形をしていて魅力的でした。
私たちには丁度良い目標だったと思います。

登山は残念ながら頂上まで標高差で150m?を残し敗退となりました。脆く垂直のギャップはあまりにも危険で諦めるしかありませんでした。

多くの費用と準備をしてきただけに、敗退に色々な想いはあります。

しかし帰国後、各自、次に向けて少しづつ動き始めています。このヒマラヤ登山の経験が、今後の登山に生かされることを願っています。


メンバー 山野井泰史、古畑隆明、植田寿洋


日程
9月6日 成田~ニューデリー
9月7日 レー
9月10日 カルギル
9月11日 パダム
9月12日 レルー村
9月13日 スンド(トレッキング)
9月14日 ベースキャンプ
9月15日 偵察
9月19日から21日 偵察+順化
9月25日から27日 R24登攀
10月8日 レルー村
10月10日 カルギル
10月11日 スリナガル
10月14日 ニューデリーから成田

(記 山野井)

南稜フランケ

ずっと登りたいと思っていた「南稜フランケ」を登ってきた。
天気予報を見ると、6/3~6/6は晴れそうなので、乾くことを期待して6日に行くことにする。
出合に着くと、とても良い天気だ。
雪が少なく、出合からしばらくは右岸の巻き道を行き雪渓に下りた。
テールリッジ末端のシュルンドは問題なく通過。
出合から1時間で中央稜の取付に着き、烏帽子沢奥壁のバンドを歩き鎌形ハングの右端で、登攀の準備をする。

グレードは体感・・・

1ピッチ目(Ⅳ+・40m)
右のカンテを越えてフェースを登り、草付の凹角手前まで。
ザ・逆層って感じで意外に悪い・・・
2ピッチ目(Ⅳ+・40m)
左上する草付のランぺ(今は言わないかな・・・)からハングの切れ目を目指して右上しビレイポイントへ。ビレイポイントに上がる箇所が、岩が脆くて怖い。
3ピッチ目(V・40m)
ハング下のトラバースから、岩は硬いがホールドが細かいフェースを登り大テラスへ。
トポでは「Ⅴ+」になっているが、三つ峠の大根おろしが「Ⅴ+」ならこのピッチは少し易しいと感じた。
4ピッチ目(V+・30m)
大テラスから左に見えるフェースを登り、バンドを左へトラバースしカンテを越えてYCC左ルートの物と思われるボルトが見えるテラスでビレイ。
カンテを越える箇所が悪く感じた。
5ピッチ目(Ⅳ+・45m)
左上する草付バンドからカンテを直上。
南稜の馬の背の上部に出た。
6ピッチ目(Ⅲ・20m)
南稜の最終ピッチ取付きの10mくらい下に懸垂ポイントが有ったので、そこで終了にして下降した。
ルート全体にプロテクションが少なく、ルートファインディングに悩む場面も有ったが、大きくルートを外すことは無いと思う。
ほぼ岩は硬いが、部分的に脆い箇所も有りリードは慎重な行動と集中力を要求される良いルートだと感じた。
何といっても烏帽子沢奥壁にあって、これだけ草付が少ないのは素晴らしい!
私が3歳の時に初登された「南稜フランケ」、評判通りの良いルートだった。

記 熊谷

GWの滝谷第三尾根

古~い友人に誘われ、GWの滝谷へ行ってきた。
目標は第三尾根、たぶん自分は登っていないと思う。
滝谷の記憶はかなり曖昧なので、「穂高岳の岩場」や数冊のトポを読み、ネットで最近の記録を調べるが、どうも最近の記録ではスッキリと登った記録が見当たらない・・・
地震の影響で、穂高岳周辺の岩場はかなり変わってしまっていると聞いている。
屏風岩の扇岩が無くなるくらいだから、滝谷も相当変わっているだろう・・・

天気予報が好転してきたので、5/3~5の日程に決定し、5/2の夜に沢渡へ向かう。
本谷橋から上は雪渓を谷通しで登った記憶があったのだが、今年は右岸の夏道沿いを歩いた。これも温暖化の影響か。

5/4、午前4時前に涸沢を出発、6時過ぎに松涛岩と北穂南峰のコルに到着。
滝谷側を覗くと、意外に雪があり、少し安心した。
が! この傾斜を下るのかぁ・・・
ということで、C沢左俣を1時間以上のクライムダウンした。
やっとのことでC沢右俣との合流点に着くが、右俣側は常に自然落石が落ちている。
なるべく第三尾根側の落石のフォールラインから外れたところを登り、赤いガリーに入った。
写真は合流点から見たC沢右俣奥壁方面(グレポンは消失?)
赤いガリーは2/3ほど雪が有り、岩が出てきた所でロープを結んだ。
出だしはアイゼンで登るには、かなり悪いスラブ。
落石が酷く、ハング下でビレイしないと命がいくつあっても足りないくらい・・・
尾根に出る5メートルくらい手前でロープがいっぱいになり、1P目を切る。
2P目はガレガレの尾根上を大きなスラブ状フェースに突き当たるまで行ってビレイ。
3P目はビレイ点から右へ、壁と突き出した岩の間を通り、C沢右俣側へ回り込む。
トポでは小ピナクルが有り、チムニー登りをして大ピナクル側へ移る、とあるが、
小ピナクルが無い???
被り気味のクラックをジャミングで越える。ハンドジャムが効くが、登山靴では厳しい(カム持ってきて良かった)
その後も、かなりヤバいトラバースをして、T3とおぼしきコルに到着。
もう1ピッチ、ドームを左に見ながら直上して、たぶんT2
そこからドームを巻くように右上、5ピッチくらいで縦走路へ出た。
何とか生きて帰れそうだ。
雪が腐り歩きにくくなった主脈を歩き、北穂沢をよれよれで下って涸沢へ帰還した。
天候に恵まれ、充実した登攀が出来た。
あと何回、この景色が見れるだろう

記 熊谷

谷川岳 一ノ倉沢一ノ沢右壁左方ルンぜ

日程2022.3.10
メンバー 熊谷、吉村(L、記)

3:00にRW駅をスタート。ぼちぼち歩いて丁度日の出ごろ取り付き着。
準備をしていた先行パーティーに先を譲って頂き登攀開始。
少し登った傾斜の立ってきたところでロープを結ぶ。
出だし少々氷質悪い部分あったものの概ね快適。
左方ルンぜ核心のF5を譲って頂き真下まで行ってみるとなんとほぼ氷がないではありませんか…さっきまでの快適さはいずこへ…
悩みながら少し探って申し訳程度に残ってたベルグラを拾って抜けました。

でもF5より、一・二ノ沢中間稜の草付きがなかなか悪くこっちの方が大変でした。
東尾根との合流手前でやっと一息。ここからは快適な雪稜と雪壁。
国境稜線に出る瞬間は感動するよーと言われていましたが、いやはや素晴らしいではないですか。
これはまた来たくなってしまいますね。
15:25山頂。写真撮って肩の小屋で装備片して下山開始。
天神尾根をトボトボ降りて18:30RW駅着。
お疲れさまでした。

F5へ

一・二ノ沢中間稜上部

国境稜線へ

足尾 松木沢ジャンダルム

日程 2020年10月31日
メンバー 吉村(記)、瀧川

ミックスクライミングの練習に松木沢ジャンダルムの中央壁直上ルートを登りに行ってきました。
冬山でまともなクラック登ったことなんてほとんどないのでかなり難しく感じましたが手袋でジャムしたり、フッキングしたりいい練習になりました。
この山行の後日アイゼンでのフットジャムのコツを教えていただいたのでまたどこかで練習したいです。
どこかのブログに書いてありましたがテムレスはジャムが良く効いてよかったです。

松木沢ジャンダルム
4ピッチ目