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※更新情報※

2025/10/16 会員専用資料追加しました。

南八ヶ岳東面 地獄谷 上ノ権現沢 夢幻沢大滝

日程:2025年12月13日(土)
行程:美し森〜出合小屋〜上ノ権現沢〜夢幻沢大滝〜同ルート下降〜下山
メンバー:山本・鈴木(拓)

八ヶ岳の夢幻沢大滝を登ってきた。まだこんな滝がこんなところに眠っていたのか。昨年、権現バットレス登攀のウォームアップに、上ノ権現沢の支流にかかるこの滝を登ろうと試みた。ところが沢をつめていったところ、激ラッセルを強いられ、結局時間切れで敗退してしまった。ただこの滝は本流しか見ずにぼーっと歩いていると見逃してしまう。去年の記憶では、この滝が隠れている谷の手前まで来て、ラッセルが嫌になって小屋に戻った。時間切れで登れなかっただろうとはいえ、一目見ることはできた距離までは沢を詰められていたのだ。なんだよ〜とは思ったが、ともあれ、とても良いシーズンインを果たした。

アイスクライミング・ミックスクライミングは、これからがシーズン。この遊びは、最もフィジカルで、最もアドバンスで、そして最も、フェティッシュな遊びだ。今シーズンもバリバリ登るぞ!

谷川連峰 エビス大黒沢 渓谷登攀

日程:2025.9.22-9.23

行程:
 1日目:谷川温泉〜金山沢出合
 2日目:出合〜登攀〜エビス大黒の頭〜登山道下降〜谷川温泉

メンバー:山本・鈴木(拓)

筆者にとって今年最後の沢登りとなったエビス大黒沢。下山はリミットの20時をギリギリ越えない範囲だったものの、予定より大幅に遅れた。登攀はどの滝も難しく、高巻きにも手こずった。登る壁を間違えて一度撤退した箇所もあった。

初日は夜に入山して適地で幕営。明日に備えた。

登攀日、暗いうちからロープを出して登り始め、薄明るくなってきてから開けたスラブに出会った。

関門の滝。ここはフリーで超えた。快適なスラブ。左岸から登ろうとしたが、かなり悪い。少し戻って右岸から上がった。沢登り・フリーの山本が頼りになる。

日が登ってから最初のロープを出したクライミング。鈴木が1P目を登る。逆層がとにかく悪い。一箇所細かいホールドを掴んで乗っこすところが緊張したが、トーテムカムの黒が登れとせかした。

2P目は山本がリード。その後、二本足で歩ける場所へ降り立った。と思う。あまり覚えていない。ぐんぐん登ると、沢が開けた先に、どでかい大滝が現れた。

この滝は登らないが、右の岩壁を山本がトラバース気味に右上。ピトンを4枚程度、カムも使用して登り切った。一時間ぐらいかかった。ビレイ中は左の滝飛沫を浴びて寒かった。フォローで自分は登るが、一歩踏みだすたびにズルズルと足が沈んで滑る泥壁・・・クライミング的にはここが核心部っぽい。(山本は次のピッチの方が怖いと言っていた)。

2P目は鈴木がリード。再び滝の方角へ左トラバース。濡れたスラブのトラバースは怖いが慎重に。その後クラックや木登りを交えて灌木帯へ。ロープいっぱい伸ばしてビレイ解除。

フォローの山本を迎え、とにかく終わってよかったと言い合いながら、しばらく高巻き。一箇所、肩車で滝を越える場面もありつつ、懸垂下降で本流へ降りた。

最後の壁、右壁を登り出すも、どうも悪い。カムを決めてエイドを使って立ち上がって先を見渡してもめぼしいホールドはない。敗退か・・・ビバークも頭を過ったが、なんとか右岸から高巻きできそう。

検討通り、懸垂下降のち、右岸を高巻き。いつまで続くか分からない背丈以上の笹藪を掻き分け、本流の左俣に入った。右俣に抜ければ稜線まですぐなのだが・・・仕方ない。そのまま稜線に向かって歩く。尾根っぽいところに出てから、さらに標高を上げる。

ようやく安全地帯まで来られた。ただここからもわかりにくい下山路が続いた。GPSには助けられた。

もう2度とこの沢には来ないだろう。ただ、生きていることの大切さを噛み締めながら、帰路についた。名声はいらないので、小さな幸せを求めて、これからも沢登りを続けたい。

Old but ・・・ マリオネット

マリオネットが登れた・・
39年前に山野井君が初登した、岩と雪117号の表紙にもなったルートだ。
私は幸運にも、初登時のビレイをし、名付け親にもなれた。
しかし当時の私にはこのルートにトライする力は無く、その後長い間訪れることも無くなってしまった・・・

2016年に初めて触ったが、足元に見える空間にビビり、ボコボコにされてしまった・・
そして今年の1月2月に1回ずつ、9年ぶりにトライしたが、今度は寒さで身体が動かない・・
城ケ崎としてはシーズン真っ盛りなのだが、60代の老体には寒すぎる・・
「ここなら夏でも登れるんじゃない?」のY君の言葉に一念発起、頑張って通ってみることにする。
4月26日に再訪、しかし今度は上部の引き付けるムーブで左肘を痛め4ヶ月離れることになってしまった。
力でねじ伏せるのではなく、ヒネリや足さばきで登らないと、これはダメなんだ、と改めて痛感した。
怪我から回復した8月中旬からトライ再開、しかしさすがに暑い!
特にチムニー部は熱がこもり、レストしていても汗が噴き出してくる。
まもなく前期高齢者の身体には休養の時間が必要で、以降2週間おきのトライにした。
ボコボコにされ、私が年齢を言い訳に弱気の発言をすると、毎回ビレイに付き合ってくれるY君が「今だから面白いんじゃない!あきらめる事は、いつでもできる!」と励まし?の言葉・・
そうだ、やめることはいつでもできる、今この年齢で頑張るから面白いんだ!
ジムのパートナーのアドバイスのおかげもあり、本当に少しずつではあるが、進歩が感じられるようになってきた。
そして10月19日の1便目、出だしは少々バタバタしたが、落ち着いてレストポイントで休め、苦手だった上部も何とかノーテンでこなし終了点が目前に・・
だが終了点へのクリップが出来ない・・
前腕がパンパンになってしまい、片手での保持が出来ないのだ!
吐きそうになるのをこらえ、何度か左右の手を入れ替えてクリップ成功!
「テンション」のコールで下へ降り、Y君と恥ずかしながら握手をすると、39年前にタイムスリップしたような、とても幸せな瞬間を感じた・・・


おまけの話
39年前にY君が残した初登時の終了点のカラビナとスリングを回収しました。
回収便で登る際に「終了点のカラビナ、記念に持っていたら?」との言葉で、私の宝物にさせていただきました。」
カムは回収できなかったので残っていますが、少し見た目がスッキリしました・・


最後に故杉野保さんの言葉を引用します・・
「まずひとつ言えることは、このルートは理屈抜きにおもしろいということだ。それは、超立体的構造が要求するムーブの多様性でもあり、露出感の極めて高い爽快な核心部でもある。(中略)「チンケなルートとは、体の一部しか使わないルートのことだ」吉田和正氏の言葉を借りれば、これはまさに対極にあるルートと言ってもいい。(中略) これはもっと登られてもいい、いや登られるべきルートである。」
そして、「世のクライマーたちは登るべきルートを間違えているのかもしれない。」としめくくっている。

記 熊谷


槍ヶ岳 北鎌尾根

9月の連休を利用して北鎌尾根を登った。
あまり登攀要素はなく、山歩きに近い山行だが(※アルパインクライミングをしている人間からすれば)とても良いルートだったのでここに書き記して残そうと思う。

日時:9/21~9/23
メンバー:鴨志田・土屋・武田(文責)


9/21
早朝沢渡駐車場へ集合し、上高地へ向かう。夜中のうちは大雨だったが、5時すぎには雨もやみ、そのタイミングでバスに乗り出発した。
汗だくになりながら水俣乗越を超え北鎌沢出合へ。時間も体力も余裕があったので北鎌のコルまで上がることにした。
前日の雨のせいで水量の多い沢をアプローチシューズでひたすら登ること2時間。同じタイミングで北鎌のコルで登ってきた2人組と場所を分け合い幕営した。

9/22
夜明けとともに行動開始。独標までは踏み跡を探しながら歩きやすい道を辿る。
独標は基部から右にトラバースする明瞭な踏み跡を歩いた。
独標を超えると遂に尾根の先に大槍が見えてくる。その後は岩稜帯が続き、慎重にルートを探りながら進む。
大槍は左側の登りやすい岩場を穂先を目指し高度を上げていくと、多くの登山者がいる山頂へたどり着いた。
時間もお昼ごろだったので横尾まで歩いた。

9/23
横尾〜上高地へ2時間強で下山。連休最終日の渋滞に巻き込まれる前に中央道を抜けることができた。

時間
9/21

6:00 上高地
12:00 水俣乗越
13:50 北鎌沢出合
16:00 北鎌のコル
9/22
5:30 北鎌のコル
7:00 独標基部
11:30 大槍山頂
16:00 横尾

姫路から単独で来た方に取っていただいた一枚。
初めてなので、、、と先を譲ってくれたが、すぐ後ろをついてきていたので4人パーティーで登っている気分だった。

南八ヶ岳・大同心雲稜ルート

2025.08.30 南八ヶ岳・雲稜ルート

メンバー: 瀧川・武田・鈴木(拓)

穂高屏風岩に引き続き、今度は南八ヶ岳大同心”雲稜ルート”を登ってきた。南八ヶ岳は冬季に何度も登ってきた。特に大同心稜はアプローチ等で活用し、登下降を繰り返してきた。大同心に関して言えば、大同心ルンゼから登り、回り込んで頭に立ったのが8年前。その後、南稜を登ったのが6年前。そしてしばらく空いて今年、北西稜を登った。雲稜ルートの存在は知っていたが敷居が高いように感じ、登るならばドライツーリングで登りたいと考えるも、実力がまだ及ぼないと避けてきた。八ヶ岳でクライミングをするなら有名なラインで言えば雲稜ルートぐらいしか残っておらず、ぜひ最後の課題として取り組みたい。だが今年も達成できず。まずは自信をつけるということと、ルートを確認しておけば、比較的敷居を下げられるという仮説のもと、今夏に予備山行として決行した。結果、次の冬に登る自信と、期待感を得ることができた。その記録をここに残したいと思う。

<前日>

登攀前日の夜、西船橋駅に集合。千葉県出身の3人組が諸々の事情で再び千葉県で会合した。車で山梨へ移動し、近場の野営地で1時ごろ野宿した。鈴木は不足する睡眠時間を確保するために、夕方仮眠をとっていた。それから数日前から湧き上がるモチベーションを抑えられず、かつ、ブラックチョコレートのカフェインで頭が冴える状況。全く眠れないまま、綺麗な山梨の夜空と二人の寝息を聞きながら、起床時間の3時を迎えた。

<登攀日>

赤岳山荘の駐車場へ、4時すぎに到着した。4時半ごろ、ヘッドランプをつけて徐々に歩き出す。雪のない北沢の登山道が新鮮だった。1時間程度で赤岳鉱泉へ到着し、小休止する。アイスキャンディーのない鉱泉も違和感があったが、空気がとても澄んでいて気持ちがいい。再び歩き始め、大同心稜を登る。1時間程度歩くと、大同心の西壁が見えてくる。取り付きから壁を見上げると、冬にはどこから登ればよいのか観察しても不安しかなかった岩壁も、次第と合理的なラインが見えてきた。7時ごろ、登攀開始。

<1P目>リード:瀧川

至る所に散らばるガバホールドを使い、豪快に直上する。一部ハングがあるが、ガバを使って気持ちよく超えることができた。ハング部分は、冬季は緊張するかもしれないが、手袋でもしっかりと掴めそうなホールドはあったし、スタンスも選べば問題ない。

<2P目>リード:瀧川

続くピッチも直上した。一箇所ステミングを使う微妙なパートがありつつ、同じくガバホールドを使って登る。スラビーな岩面にアイゼンはたてられないが、前爪を引っ掛けられそうなスタンスや、ガバの位置などを確認できたので、冬季でもこのパートは登れそうだ。

<3P目>リード:武田

このピッチから、最終ピッチめがけて右上気味に登り始める。ジェンガのように積み重なった浮石の多いラインを丁寧に登った。

<4P目>リード:武田

このピッチは大きく壁を見て右側にトラバースする。トラバースは何度やっても怖い。フォローも怖い。それでも楽しい気持ちが勝ち、最後のピッチへの期待感に胸を踊らせた。

<5P目>リード:鈴木

このパートは、フォローだが冬季に南稜を登った際、登攀している。ガバもスタンスも多く快適な直上ラインだが、当時はストレートに近いピッケル2本(リーシュ)のみで登り、猛烈にパンプした記憶がある。丁寧にガバを探し、落ち着いて足置きをすれば、十分に冬でもリードができる。このピッチは南に面しているので、東側に隠れていた太陽光が気持ちよく、頭にたどり着いた。フォローの2人も面白かったと口を揃えて登ってきた。

下山道中、クライマーに、早いですね、継続しないのですか、と声をかけられたが、こちらからすれば最暑の時間に登りたくないのだ。それでも睡眠時間を確保するという観点で言えば、遅く出た方がいいのだろうか。いや、先発がいると落石の危険もあるし、遭難リスクを下げるための最善は、しっかりと眠ったうえで、早く取りつくことだと思う。人が3人しかいない岩壁の中で、最高な時間を過ごすことができた。次回は冬に。

槍ヶ岳西稜

2025.8.13(水)-14(木) 雲、霧時々晴れ

メンバー: L瀧川・会外2名

2年前のリベンジとして槍の西稜を目指すが、結果として同じく中途半端になってしまった。微妙な記録だが最近若手がしっかり記録を残しているので自分も残そうと思う。

山の日前から雨が続いていたので、滝谷の増水を考え新穂高温泉側から上高地にアプローチを変更した。装備は残置無視を目標としキャメロット6番から0.2番、ロープは60mを用意

8月13日0300、仲間達と沢渡駐車場に集合して0420のタクシーを狙うも、先日までの豪雨によりタクシーとバスの出発が遅延する。不安がよぎるも意外と早く解消し、0545上高地を出発することが出来た。

少し歩くと不穏な看板を発見、左岸が梓川の増水のため通行止めらしい、氾濫しそうな梓川を眺めながら明神側から迂回し+2キロくらいの行程を歩く。まあ片道20kの中では誤差だろう。殺生ヒュッテ泊予定だったが、近い方が良いと思い計画変更、1245槍ヶ岳山荘到着

晴れない霧により周囲はびちゃびちゃ。風も強く爆風、ヘリポート側のアプローチ経路から西面の岩の状態を確認するもびちゃびちゃ。翌日の行動方針は3つ、①岩が乾くまで粘り、時間のバックストップを含め小槍からか曾孫槍からか選択②登頂して下山③下山、今の状況が続くなら③だが、とりあえず寝た。

14日0100、雨音に目が覚める。これはもう乾かないなと思いながら二度寝、0400に起きて飯食べてテント撤収、外は濃霧、0430に岩の状態を確認するがびちゃびちゃ、半ば諦めながらメンバーに0500から行動出来るように伝える。

風があるため渇き待ちを実施、すると一瞬霧が晴れ、槍の全貌が露わになる。初めて見るわけじゃないのに心が震えた。西面の岩の状態を確認しに行く。さっきよりかなり乾いていた。

0530登攀を決意。パーティーの技量、タイムリミット、岩の状態をグルグル考えて曾孫槍から登ることにする。デカいキャメを泣く泣くアプローチザックに残置し、0545山荘を出発。0645曾孫槍基部。登るにつれ風で岩がみるみる乾いていく。これ、登れたんじゃないか?何度も小槍をうらめしく振り返りながら0930登頂。1030山荘から下山を開始する。

途中徳沢でアイスを食べたりしながら1555上高地着。

帰り道、タクシー運転手さんに聞くと繁忙期はゲートが閉鎖するまで運行しているらしく、タイムリミットは1900くらいまで大丈夫だったらしい。

3度目の正直をいつ実施するか考えながら、かつ玄で夕食食べて帰りました。

穂高岳・屏風岩東壁〜雲稜ルート〜

2025.07.19-20 穂高岳・屏風岩〜雲稜ルート〜

メンバー: 山本・鈴木(拓)

<上高地〜横尾>

19日朝、眠れない高速バスが上高地に到着した。外に出ると、半袖では寒すぎる気温。そして眠い。というか、バスのなかも寒かったな?特に準備することもなく、おにぎりを一つ咥えて、横尾に向けて歩き出した。道中もとても涼しく、2時間強で到着。登山届を提出し、パトロールのお兄さんにやさしくアドバイスをいただいた。

<横尾〜屏風岩>

横尾から1ルンゼ押出と出合う岩小屋跡まで歩き、冷たい水の中を渡渉。初めてだったが道は分かりやすく、ルンゼを登って行くと急に開け、屏風岩東壁がよく見えた。ルンゼ脇の木陰になりそうな箇所に荷物を置いて、空身で偵察をしに行った。T4尾根末端部分には雪渓が残っていて、吹き下がる風が涼しい。雪渓上はほとんど歩かずにT4取り付きまで登ることができた。T4のラインもだいたい掴んだところで、荷物置き場に戻る。まだ10時台だが、特にできることもない(暑すぎて登る気力は起きない)ので、しばし日陰で昼寝をすることにした。数時間寝てから起き、日々の色々なこと(不安なことも、幸せなことも)に思いを馳せた。この時間があるから、山登りはやめられないと思う。ただ岩場を登るためだけに歩いてきたわけじゃない。

屏風岩東壁を見上げる。

<T4下部〜ビバーク>

夕方、日向が完全になくなったころ、のそのそと動き出し、とりあえずT4尾根始め2ピッチに一本ずつフィックスを張ることにした。1ピッチ目は山本がリードし、一本ロープを張った。フォローで鈴木が登り、そのまま2ピッチ目をリードしたのち、ロープをセットして懸垂下降で取り付きまで降りた。この日はルンゼ脇の適地でビバークし、次の日に備えた。

<雲稜ルート登攀>

深夜2時半、充分な時間眠ったとはいえ真っ暗闇の中、眠い目をこすりながら起床。朝飯を済ませて3時半に出発した。前日のフィックス設置は英断で、暗闇の中でも安全にT4下部2ピッチをユマーリングをすることで処理できた。その後は明瞭な踏み跡を辿り、一部クラックをチムニー的なムーブで登り、T4テラスに到着。薄明るくなる4時半ごろに、雲稜ルートに取り着いた。1P目は山本がリード、5.7とトポには書いてあるが、フォローの鈴木は一部残置スリング(?1mm程度の細引き)をつかみ、なんとかピナクルテラスへ。2P目は鈴木がリード。5.9という触れ込みだが、圧倒的悪さにA0を駆使してトラバース、扇岩があったテラスへ。そして核心のボルトラダーパートは、山本がリード。ヌンチャクをかけて掴むという動作を基本として、一部アブミも交えながら登った。古い支点に落ちられない恐怖と闘いながら、フォローも丁寧に時間をかけて登った。このピッチは1時間程度かかってしまった。4ピッチ目は鈴木がリード。このピッチも微妙なトラバースを含み、残置スリングに助けられてなんとか東壁ルンゼへ入り、ルンゼを少しあがったテラスまで。5P目は60mロープいっぱいに伸ばして草ボーボーのルンゼを山本がリード。終了点より残り数メートル上に設置されたラペルアンカーまで鈴木が登り、ジャスト8時ごろ懸垂下降を開始した。T4までスムーズに降りたが、壁には後続パーティとして7人ほどのクライマーが岩にかじりついていた。岩自体も暑くなる時間帯、すこし心配になったが、とりあえず自分らは安全圏(T4尾根取り付き)まで懸垂下降で降りた。途中、雪渓クーラーや、渡渉ポイントで涼みつつ、昼前には横尾を通って、上高地に下山した。

核心の3ピッチ目を山本が登る。

これまでフリークライミングにこだわって、自分でもフリーで登れる易しいグレーディングのルートを基本に登ってきた。そのため、エイドクライミングからは距離を置いて接してきた感がある。ただパートナーの希望で今回雲稜ルートに触れ、先人たちがボルトを大量に打ち込んでまで登ろうとした執念と、その巨人の肩の上に立つことで成立した今回のクライミングには感慨深いものを感じた。またしばらくは自分のスタイル(フリークライミング)にこだわって登山を続けるだろうが、この時の気持ちを忘れずに、いつか言語化できるように心に認めたいと思った。

初夏の錫杖岳ロッククライミング:LittleWing, 注文の多い料理店

2025.06.28(土)-29(日) 快晴
メンバー: 土屋・山本・鈴木(拓)
文責: 鈴木拓海

梅雨の合間に、北アルプス南部に位置する錫杖岳の前衛フェースを登ってきた。この時期には既に雪渓は消失していて、綺麗な水が錫杖沢を流れていた。アプローチ途中の緑たちは生い茂っており、ルート途中にも草がのびのびとしていた。梅雨の中休みにもかかわらず状態は良くて、充実したクライミングを行うことができた。

初日は朝6時ごろゆっくりと起き出し、いつものように、”どんべい”のためのお湯を沸かした。前日1時半ごろようやく眠りにつけたので、4時間半しか寝ておらず全く体の動きが鈍い。せめてもの救いが、東京と違って涼しいことだった。日差しも出てきて、快晴の中、ワクワクしながら歩き出した。

<<Little Wing >>

錫杖沢出合にテントを設営し、すぐに準備を済ませて前衛壁を目指した。昨年5月末に、左方カンテと1ルンゼを登っていたのでルートはバッチリわかった。ただ1ルンゼの取り付きまでは雑草が生い茂っており、踏み跡を少し外れてたどり着いた。10時前、少し遅い時間だが、LittleWingを登攀開始。3分の2ぐらいは1ルンゼを登るルート。鈴木がはじめの2ピッチをリード。日差しが暑いが、最近は沢登りばかりしていたので、乾いた岩を登るのが楽しい。(しかも、他に誰もいない!)。続いて、山本が次の2ピッチを登った。そして1ルンゼから逸れて、LittleWingへ。予定通り12時前に到着。

LittleWingはじめの5.9セクションは土屋さんリード。これまでの様相と全く異なり、垂直のクラックを登る。カムを慎重に決めて登られていた。ここからは日陰に入り、暑さを凌いで快適なクライミングを楽しめた。次の5.10cのピッチは山本がリード。ハンガーボルトの状態が少し悪いようだったが、カムも決めながら順調に上がる。最後の核心ピッチは鈴木にとっては緊張する楽しいクライミングだった!懸垂下降は4回で取り付きへ。下りは一瞬。テント場に戻って食事と団欒の後、18時には夕陽で明るいテントの中で就寝した。

<<注文の多い料理店>>

翌日は4時に起床。5時すぎには出発した。既に気温も高く、沢の冷たい水がうまい。北沢側フランケに回りこみ、登攀開始。1-2ピッチ目はロープいっぱいに継続し、鈴木がリードした。支点が遠く感じる区間もあり、緊張しながらではあったが、岩を掴むたびに幸せホルモンが脳内を駆け巡った。核心3ピッチ目も鈴木がリードした。フィスト大好きお兄さんなので、もちろんフィストジャムを両手で決めて、プチ被り壁を超えた。その後は快適なクラックを超え、終了。4ピッチ目は山本がリード。このピッチも緊張感があった。5ピッチ目の長い凹角左のクラック沿いラインは土屋さんがリード。続けて左方カンテの最終フェースも土屋さんがリードし、山頂まで抜ける最後のピッチは省いて懸垂下降で取り付きまで降りた。5.8とはいえ久しぶりの本格的なクライミング、安全に楽しめて充実した週末になった。

関東からは少々遠いし、浮石も多少あって、緊張感のある岩場だが、人は少ないし、面白いラインがたくさんある。また時間を作って必ず登りに戻ってきたい。

残雪の宝剣岳〜東壁中央稜〜

2025.04.12(土) 快晴のち曇り
メンバー: 土屋・鈴木(拓)
文責: 鈴木拓海

以前よりトライしてみたかった中央アルプス・宝剣岳の東面を残雪期に登ってきた。中央稜を登る予定だったが、思いがけずバリエーションルートを登ることとなった。自分にとっては2024/2025最後の雪山で、全てのピッチをリードし、充実したクライミングで今シーズンを終えることができた。

決行日、眠い目をこすりながら、菅の台からバスとロープウェイで千畳敷駅へ移動。08:50頃、身の回りの準備を済ませて、千畳敷カールに足を踏み入れた。この時点でハッキリと見える宝剣岳東面に笑みを隠せなかった。天気は快晴で、雪もそれなりについているのが見えた。(これで楽しくないわけがない)。山の上は一面白銀の世界で、一気に目が覚めた。既に八丁坂を登る登山客の列からはみ出て、宝剣岳東面を目指しているパーティがいたので、彼らのトレースのあとをついて行った。



壁に近づくと、2P目を登っている3人パーティの姿が見えた。さらに壁を目指して歩いている最中、ガガガッという音がしたので壁を見上げると、フォローのクライマーがロープにぶら下がって、ゆれていた。(まじかよ〜自分に登れるかなと急に不安になる)。

取り付き付近の樹木にセルフビレイをして、登攀準備を始めた。トレースをつけてくれた先行パーティに先を譲るも、待っていても仕方ないので登れそうなラインを登ることにした。「中央稜の1P目は2ルートぐらい登られてるよな」と思いつつ、左の方へトラバースして壁に取り付いた。



10時前に登攀開始。割と立っている岩にへばりついている凍っていない草付きに、ダブルアックスで身体を上げようとすると、左手のアックスが土と共に剥がれた。身体をゆっくりとまた下げながら、どうすんだこれ・・・と逡巡するも、他に登れそうなところはないので、「えいや」で思い切って身体をもう一度あげた。その後は、草付きがなくなり、完全なスラブ。ハーケンが連打されていたので、スリングをかけて荷重をかけてトラバースをしつつ稜線めがけて登った。あとからわかったことだが、左フランケルートに入ってしまったらしい。ハーケンが見当たらなくなり、再び現れた草付きをダブルアックスで越えた。1P目はデカイ木で終了。

先行パーティのリードに合流し、お互いのルートの感想を話し合った。フォローの土屋さんも無事登ってきた。先行パーティが先に2P目を登り始めたが、その右側に顕著なクラックが走っていたので、僕らも並走してこちらのクラックを目指して取り付いた。まずは出だし、薄く雪が載ったスラブを滑らないように丁寧に足置きして登った。右側にクラックがあるが中の岩はボロボロで全然安心できなかった。少し登ると小ハングがあり、目の前にカムをセットできたので一安心。ただここからどうやって上がればいいのかわからず・・・スリングでアブミを作って身体を上げるも、クラックは広すぎて体勢も悪かった。しばらく逡巡し(再び)、意を決して再度身体を上げ、凹角状の左壁にくっついているコケにアックスを刺し、足をスリングから外した・・・。この瞬間、ビリビリッと脳に緊張が走るが、足をハング上のクラックに入れ、アックスは剥がれず持ち堪えてくれた。その後はフィストサイズのクラックと、左壁のコケを使いながら雪の載ったハイマツまで登った。ハイマツ登りは大得意範囲。ハイマツをつかみ、雪にアックスを刺して、ビレイ点から見えていた雪の傘を乗越した。その後は快適な雪面を登り、木で終了。



再び先行パーティのリードと合流(先行パーティは2P目を2パートに分けて登った)した。土屋さんの方が先に登ってきたので、僕らの方が先に3P目オケラクラックを登らせてもらった。本来中央稜はオケラクラックが核心と言われている。ただ、エイドを交えても奮闘的な1-2P目を越えていたので、緩い傾斜でカムがしっかり入るオケラクラックは容易に感じた。クラックの中にグサグサの雪がつまっていて、アックスが刺さりにくいのが登りづらくさせていたが、フットジャムをしっかりと決めて着実に登った。終了点はカムで作った。



最終4P目は初めに草付きを登ると、二本足で歩ける雪稜に変わる。今日のクライミングを思い返しながら、山頂に立った。空は少し雲がかかってきていた。身支度を整えて山荘方面へ下り、八丁坂を降りた。



奮闘的なパートがあったとはいえ、中央稜は4Pしかないので、「まだまだ登り足りないなあ」と消化不良な気持ちを抱えていた。そのためか、何度も東面を振り返り、オケラクラックを登っているパーティ(先行パーティ)を見て、「楽しかった」、「良かった」、と何度も土屋さんと話していた気がする。

宝剣岳はまだまだ登りたいルートがたくさんある。来年は厳冬期にチャレンジしたい。

2024年度の冬山

2024年は色々と変化の多い年だった。
学校を卒業し、就職し、引っ越しなどなど、生活が大きく変わった。
そんなわけで日々忙しく山に行く時間も減ってしまって、、、

なんてことにはならず、研究室とバイトから解放され、休みの日に思う存分山へ行けるように。自分の記録を見返すと2024年は合計54日山へ行っていたようだが、HPで報告した山行は3件だけ。定期的に更新し冬壁をやる人間がいることも主張しておかねば、ってことで2024年度冬シーズンの山行を振り返ってみようと思う。

12/1 八ヶ岳 赤岳主稜
シーズン初めで雪不足を心配していたが、行ってみたら山は真っ白。天気は快晴。珍しく風が弱く非常に快適で楽しい冬壁シーズンインとなった。

12/14 八ヶ岳 峰の松目沢(南西沢)
これは帰ってから知ったことだが、峰の松目沢は南東沢、南西沢と2つあり、メジャーなのは南東沢。今回はマイナーな南西沢を登ったが、ところどころロープを使いつつ沢を詰めていった。こちらもアイスの足慣らしにはちょうどよいルートだった。

12/15 八ヶ岳 裏同心ルンゼ〜小同心クラック
暗いうちから裏同心ルンゼを登り、小同心クラックへと継続した。裏同心ルンゼは初めてだったが、登攀時はほぼ真っ暗だったので気がついたら終了していた、みたいな感じに。小同心クラックへ取り付く頃にはあたりは真っ白で風が強く、極寒。それでもアイゼンアックスを駆使し、一手一手ロープを伸ばすクライミングは非常に楽しかった。色々と反省点も多かったが、気づきの多い充実した山行だった。

12/29-30 常念岳 東尾根
年末の天気予報があまりよろしくないため当初予定してた計画を変更し、常念へ。初日はひたすらラッセルし幕営適地まで。2日目に山頂を踏んで下山した。

2025/1/3 八ヶ岳 峰の松目沢(南東沢)
1ヶ月前に行っていないほうの峰の松目沢に。少し氷が薄いところもあったがアックスがよく刺さる。最後の90度、10mほどの滝はなかなか奮闘的であった。

1/4 八ヶ岳 赤岳〜硫黄岳
翌日に長野でスキーをする予定を立てていたため家に帰るのがもったいなく感じ、一人山に残り南八ヶ岳を歩いた。クライミングに慣れてしまったせいか、やはり山は誰かと行くほうが楽しめると感じた。

1/24 八ヶ岳 中山尾根
この週は気温が高かったようで、1pはほぼドライツーリングだった。じゃんけんに勝ち核心ピッチをリードするつもりで行ったがパートナーが2pつなげて登ってしまった、、、
1pのフェースほうが難しく感じたからまあいいか。

1/25 広河原沢3ルンゼ
パートナーがテント代を払いたくない、ということでわざわざ一旦下山して隣の広河原沢に(笑)アプローチが長いせいか、はたまた天気予報が芳しくないせいか南稜含め誰も人がいなかった。雪で埋まっている滝が多くロープを出さずに終わるんじゃないかと思っていたが、最後の最後に激悪Vアイスが出てきて叫びながら登った記憶がある。パートナーいわく摩利支天大滝より悪かったそうな、、、

1/31-2/2 宝剣岳 極楽尾根
人生初の中央アルプス。極楽尾根の登攀日は6時前行動開始、20時テント戻りと、なかなかハードな山行だった。山行記録をHPに載せようと途中までは作成しているのだが、、、
長く、険しく、かっこいい尾根だった。

2/15 谷川岳 一の倉沢、幽ノ沢(偵察)
幽ノ沢F沢を登ろうとしていたが気温が高く、雪崩の危険性が高いため中止し偵察という名の谷川観光。一ノ倉沢出合にテントを張りダラダラと本を読んだり酒を飲んだりしながら雪崩等を観察しようという目論見であった。結局雪崩は全然発生しなかったが、明るい時間にルート、地形、取り付き、地点などを確認できたので来シーズンまたトライしたい。
この谷は何時来ても美しく、恐ろしく、魅力的だ。

2/16 谷川岳 西黒尾根
せっかく大きなザック持ってるし歩荷でもしましょう!ってことで到底日帰りとは思えないクソデカ装備を背負って西黒尾根を登った。本を10冊も持って山を登ったのは当然初めて。前日の偵察時の暇つぶしのために山を渡る全巻、トポ等をザックに入れていた。スキーヤー、ボーダーが多く来シーズンはスキーもやりたいな〜などと考えていた。

3/8-9 赤沢岳 大スバリ沢奥壁
晩冬〜春のクライミングコンビニと呼ばれている(らしい?)赤沢岳へ。冬季クライミングの本によるとテント場までは3〜4時間で、気合を入れれば日帰りも可能だそう。しかし行ってみると駐車場からテント場までは7時間以上かかったため登攀は2日目のみ。左岩稜正面チムニールートに取り付いたが途中敗退という結果に。2泊以上かけてじっくり登りたい岩場だった。

ひとまず今年の冬山は終わり。(残雪期はちょこちょこ行こうと思っているが、、、)来シーズンはスキーをしながら山を歩いたり、担いで登ったりしたいと考えている。