初夏の錫杖岳ロッククライミング:LittleWing, 注文の多い料理店

2025.06.28(土)-29(日) 快晴
メンバー: 土屋・山本・鈴木(拓)
文責: 鈴木拓海

梅雨の合間に、北アルプス南部に位置する錫杖岳の前衛フェースを登ってきた。この時期には既に雪渓は消失していて、綺麗な水が錫杖沢を流れていた。アプローチ途中の緑たちは生い茂っており、ルート途中にも草がのびのびとしていた。梅雨の中休みにもかかわらず状態は良くて、充実したクライミングを行うことができた。

初日は朝6時ごろゆっくりと起き出し、いつものように、”どんべい”のためのお湯を沸かした。前日1時半ごろようやく眠りにつけたので、4時間半しか寝ておらず全く体の動きが鈍い。せめてもの救いが、東京と違って涼しいことだった。日差しも出てきて、快晴の中、ワクワクしながら歩き出した。

<<Little Wing >>

錫杖沢出合にテントを設営し、すぐに準備を済ませて前衛壁を目指した。昨年5月末に、左方カンテと1ルンゼを登っていたのでルートはバッチリわかった。ただ1ルンゼの取り付きまでは雑草が生い茂っており、踏み跡を少し外れてたどり着いた。10時前、少し遅い時間だが、LittleWingを登攀開始。3分の2ぐらいは1ルンゼを登るルート。鈴木がはじめの2ピッチをリード。日差しが暑いが、最近は沢登りばかりしていたので、乾いた岩を登るのが楽しい。(しかも、他に誰もいない!)。続いて、山本が次の2ピッチを登った。そして1ルンゼから逸れて、LittleWingへ。予定通り12時前に到着。

LittleWingはじめの5.9セクションは土屋さんリード。これまでの様相と全く異なり、垂直のクラックを登る。カムを慎重に決めて登られていた。ここからは日陰に入り、暑さを凌いで快適なクライミングを楽しめた。次の5.10cのピッチは山本がリード。ハンガーボルトの状態が少し悪いようだったが、カムも決めながら順調に上がる。最後の核心ピッチは鈴木にとっては緊張する楽しいクライミングだった!懸垂下降は4回で取り付きへ。下りは一瞬。テント場に戻って食事と団欒の後、18時には夕陽で明るいテントの中で就寝した。

<<注文の多い料理店>>

翌日は4時に起床。5時すぎには出発した。既に気温も高く、沢の冷たい水がうまい。北沢側フランケに回りこみ、登攀開始。1-2ピッチ目はロープいっぱいに継続し、鈴木がリードした。支点が遠く感じる区間もあり、緊張しながらではあったが、岩を掴むたびに幸せホルモンが脳内を駆け巡った。核心3ピッチ目も鈴木がリードした。フィスト大好きお兄さんなので、もちろんフィストジャムを両手で決めて、プチ被り壁を超えた。その後は快適なクラックを超え、終了。4ピッチ目は山本がリード。このピッチも緊張感があった。5ピッチ目の長い凹角左のクラック沿いラインは土屋さんがリード。続けて左方カンテの最終フェースも土屋さんがリードし、山頂まで抜ける最後のピッチは省いて懸垂下降で取り付きまで降りた。5.8とはいえ久しぶりの本格的なクライミング、安全に楽しめて充実した週末になった。

関東からは少々遠いし、浮石も多少あって、緊張感のある岩場だが、人は少ないし、面白いラインがたくさんある。また時間を作って必ず登りに戻ってきたい。

残雪の宝剣岳〜東壁中央稜〜

2025.04.12(土) 快晴のち曇り
メンバー: 土屋・鈴木(拓)
文責: 鈴木拓海

以前よりトライしてみたかった中央アルプス・宝剣岳の東面を残雪期に登ってきた。中央稜を登る予定だったが、思いがけずバリエーションルートを登ることとなった。自分にとっては2024/2025最後の雪山で、全てのピッチをリードし、充実したクライミングで今シーズンを終えることができた。

決行日、眠い目をこすりながら、菅の台からバスとロープウェイで千畳敷駅へ移動。08:50頃、身の回りの準備を済ませて、千畳敷カールに足を踏み入れた。この時点でハッキリと見える宝剣岳東面に笑みを隠せなかった。天気は快晴で、雪もそれなりについているのが見えた。(これで楽しくないわけがない)。山の上は一面白銀の世界で、一気に目が覚めた。既に八丁坂を登る登山客の列からはみ出て、宝剣岳東面を目指しているパーティがいたので、彼らのトレースのあとをついて行った。



壁に近づくと、2P目を登っている3人パーティの姿が見えた。さらに壁を目指して歩いている最中、ガガガッという音がしたので壁を見上げると、フォローのクライマーがロープにぶら下がって、ゆれていた。(まじかよ〜自分に登れるかなと急に不安になる)。

取り付き付近の樹木にセルフビレイをして、登攀準備を始めた。トレースをつけてくれた先行パーティに先を譲るも、待っていても仕方ないので登れそうなラインを登ることにした。「中央稜の1P目は2ルートぐらい登られてるよな」と思いつつ、左の方へトラバースして壁に取り付いた。



10時前に登攀開始。割と立っている岩にへばりついている凍っていない草付きに、ダブルアックスで身体を上げようとすると、左手のアックスが土と共に剥がれた。身体をゆっくりとまた下げながら、どうすんだこれ・・・と逡巡するも、他に登れそうなところはないので、「えいや」で思い切って身体をもう一度あげた。その後は、草付きがなくなり、完全なスラブ。ハーケンが連打されていたので、スリングをかけて荷重をかけてトラバースをしつつ稜線めがけて登った。あとからわかったことだが、左フランケルートに入ってしまったらしい。ハーケンが見当たらなくなり、再び現れた草付きをダブルアックスで越えた。1P目はデカイ木で終了。

先行パーティのリードに合流し、お互いのルートの感想を話し合った。フォローの土屋さんも無事登ってきた。先行パーティが先に2P目を登り始めたが、その右側に顕著なクラックが走っていたので、僕らも並走してこちらのクラックを目指して取り付いた。まずは出だし、薄く雪が載ったスラブを滑らないように丁寧に足置きして登った。右側にクラックがあるが中の岩はボロボロで全然安心できなかった。少し登ると小ハングがあり、目の前にカムをセットできたので一安心。ただここからどうやって上がればいいのかわからず・・・スリングでアブミを作って身体を上げるも、クラックは広すぎて体勢も悪かった。しばらく逡巡し(再び)、意を決して再度身体を上げ、凹角状の左壁にくっついているコケにアックスを刺し、足をスリングから外した・・・。この瞬間、ビリビリッと脳に緊張が走るが、足をハング上のクラックに入れ、アックスは剥がれず持ち堪えてくれた。その後はフィストサイズのクラックと、左壁のコケを使いながら雪の載ったハイマツまで登った。ハイマツ登りは大得意範囲。ハイマツをつかみ、雪にアックスを刺して、ビレイ点から見えていた雪の傘を乗越した。その後は快適な雪面を登り、木で終了。



再び先行パーティのリードと合流(先行パーティは2P目を2パートに分けて登った)した。土屋さんの方が先に登ってきたので、僕らの方が先に3P目オケラクラックを登らせてもらった。本来中央稜はオケラクラックが核心と言われている。ただ、エイドを交えても奮闘的な1-2P目を越えていたので、緩い傾斜でカムがしっかり入るオケラクラックは容易に感じた。クラックの中にグサグサの雪がつまっていて、アックスが刺さりにくいのが登りづらくさせていたが、フットジャムをしっかりと決めて着実に登った。終了点はカムで作った。



最終4P目は初めに草付きを登ると、二本足で歩ける雪稜に変わる。今日のクライミングを思い返しながら、山頂に立った。空は少し雲がかかってきていた。身支度を整えて山荘方面へ下り、八丁坂を降りた。



奮闘的なパートがあったとはいえ、中央稜は4Pしかないので、「まだまだ登り足りないなあ」と消化不良な気持ちを抱えていた。そのためか、何度も東面を振り返り、オケラクラックを登っているパーティ(先行パーティ)を見て、「楽しかった」、「良かった」、と何度も土屋さんと話していた気がする。

宝剣岳はまだまだ登りたいルートがたくさんある。来年は厳冬期にチャレンジしたい。