谷川岳 一ノ倉沢3ルンゼ

 10月末に、今年一番やりたかった一ノ倉の3ルンゼへ行ってきた.
 10月中旬にも計画を立てていたが,天気等のコンディションを理由に中止に.今週末は小川山,瑞牆で遊ぼうかと考えていたが木,金,土,日と晴れの予報.先週末は雪もチラついていたようなのでここが今年最後のチャンスだと思い,金曜日に3ルンゼへ行くことを決めた.

 いつも通り夜明け前にインフォメーションセンターを出発.雨は降っていないと思っていたが,一ノ倉出合付近のアスファルトが濡れている・・・ 霧と湿度のせいだと自分に言い聞かせながら一ノ倉に入る.

烏帽子スラブの奥に3ルンゼが見える


 雪渓が完全になくなってからの一ノ倉は初めてだったが,アプローチの踏み跡はしっかりしており,ヒョングリ滝前後もフィックスロープがあり大安心.雪渓がなくなった一ノ倉沢の深さには驚いた.
 南稜テラスから本谷へ降りる道は,ぼろぼろのフィックスロープがありなんとなくラインが見えた.ビレイしながらトラバースしたら,4ルンゼF滝はすぐそこに.

南稜テラスから本谷バンドへ
南稜テラスから本谷へ(右上が南稜テラス)

1P ルンゼ
この時はF滝がそれだとわからず,2ルンゼ側を少し登り水流を巻こうと考えた.コンテで簡単な岩登りをし,ボルトがあるところまで登る.

2P 草付き
ここで少し違うんじゃないかと思い,4ルンゼ方面へトラバース.草付きとぼろい岩がいやらしかったが,F滝上に戻った.

3P ~4ルンゼF1下 ルンゼ
左のバンドが悪そうに見えたため,4ルンゼを登った.水流の落ちるCS滝(これが4ルンゼF1?)手前まで.

F滝上から4ルンゼを見上げる


4P CS滝から草付き
濡れながらCS滝を越すと3ルンゼがよく見えた.ルンゼ右側の草付きを登り,細いブッシュをかき集めピッチを切る.ここでようやくトポ通りのラインに戻ったかな?

5P スラブ
スラブは岩の上に砂利やら草付きが乗っており,プロテクションを決めるにもクラック内の泥をほじくり返したりと余計に時間がかかる.水線を攻めるほうが圧倒的に楽だったため,濡れながらF2下まで.

6P F2
水流があり残置ハーケンの腐食が激しいうえ,苔でヌメヌメのためかなり緊張する.落石がルンゼ内で跳ね回るためビレイヤーも気が抜けない.

F2を登る


7P スラブ
F2からF3下まで.ほぼ歩き

F2上からF3を見上げる


8P F3
凹角左でピッチを切ったため,チムニー下を右にトラバースしフェースへ.ここも水流あり苔だらけで緊張する.チムニー上まで行くと左に見えた残置アルパインヌンチャクに導かれて登る.(ここで直登した方が簡単だったかも・・・)ルンゼ左側は岩質が全然異なりプロテクションも取れほとんど取れず,かなり緊張した.

F3中間部をトラバース


9~11P スラブ
難しくはないが泥交じりの草付きが乗った岩が怖く,スタカットで上部岩壁基部まで.相変わらず支点は取りにくい.

12~13P 草付きスラブ
上部岩壁沿いを詰めたのち,リッジへ上がる.プロテクションの取りにくく,泥と草付きの乗った岩と,それにより濡れたシューズのせいで終始緊張する.カラッとしてたらルンゼ中央部をサクサク登ることができたのかなと感じた.日没が近づき焦る気持ちをおさえつつ,慎重にリッジへ上がると国境稜線が見えた.

悪名高い上部草付帯からリッジへ

~国境稜線 草付きリッジ
コンテに切り替え,熊笹をつかみながらひたすら藪漕ぎ.一か所だけ露岩のフェースで不通にビレイした.国境稜線とともに日没が近づき,うっすらと見える稜線へ向けてがむしゃらに藪をこぐ.小一時間ほど藪漕ぎをすると傾斜が緩み,日没ギリギリに稜線へ抜けることができた.茜色に染まる稜線を見ながら,これまでロクに休憩をとっていなかったことを思い出し,水分と食料を腹に詰め込む.評判は聞いていたが,ダイレクトに国境稜線へ突き上げた達成感は格別であった.

2・3ルンゼ中間リッジへ上がる
国境稜線まであと少し

 1日を通してトラブルがあったわけでもなく,大きなルートミスもなかったがとにかく支点をとるのに時間がかかった.水流があり濡れていたことも時間がかかった原因の一つと考えるが,やはり支点構築のスピードが遅く,未熟さを実感.(支点をとる場所を探す目・適したプロテクションの判断等,ゲレンデでは培えない技術の必要性を強く感じた)

 課題も多く出てきたが,一ノ倉沢を最深部から稜線まで突き上げることができ,非常に充実した山行となった.

以下,所要時間(参考)
04:00 インフォメーションセンター駐車場
05:00 一ノ倉沢出合
07:20 F滝
12:00 F2
13:00 F3
16:40 2・3ルンゼ中間リッジ
17:30 国境稜線
20:20 インフォメーションセンター駐車場

記・武田

前穂高岳の岩場 松高ルート・北条=新村ルート

お盆の連休を利用し,武田他1名(会外)で前穂高東面の岩場へ行った.

初日は上高地から奥又白池まで.奥又白池は前穂高東面の展望が非常に良くルートの観察ができ,快適な場所であったが,沢からは昼夜を問わず落石の音が響いていた.(焚火跡が残っていたのが少し残念・・・)

4峰正面壁

2日目は4峰正面壁,松高ルート~前穂北尾根を登った.
奥又尾根を登り,岩が出てくるあたりでトラバースできそうな踏み跡を見つけてそれを辿る.A沢のガレのトラバース,B沢の雪渓をトラバースし,C沢CS滝まで詰めた後T1へ.不安定なガレに苦戦し,池から2時間半程度.落石も頻発しているので非常に神経を使った.
以下,松高ルート詳細

1~2P 草付きのルンゼを辿りながら高度を上げていく.松高ハング下までトポだと3ピッチだったが,2ピッチで登った.
3P スリングの垂れ下がる松高ハング(というより垂壁?)を越える.その後の凹角の方が悪かった気がするが,特に不安に感じる難しさではなかったと思う.
4P いきなりハング越えから始まり,ハンドサイズのきれいなクラックの走る岩を右から回り込んで越えてもう少し登った.
5P 簡単な岩登りをして緩傾斜帯に入り,ロープを目いっぱい伸ばす.その後は緩傾斜帯の踏み跡を辿り北尾根へ.
そこからは北尾根を継続して登り,A沢,奥又尾根を下降したが,ここでかなり時間を使い,途中からヘッデン下山となった.特にA沢はガレと雪渓を懸垂しつつの下降となり,時間を取られた.

06:00 奥又白池
08:30 松高ルート取付き
12:00 北尾根縦走路
16:00 前穂高頂上
19:00 踏替点(2つ目)
19:30 奥又白池

下山が遅くなり疲労もたまっていたので,3日目は休息日とし,4日目は北条=新村ルートへ.松高ルートとアプローチがほぼ同じなので,迷うことなく1時間半程度で取付きへ.以下,ルート詳細

1P 凹角の草付きからフェースを登るが,松高ルートより岩が不安定で,プロテクションを決めやすい場所を探すのに苦労する.しかし,1P終了点にはピカピカのペツルのハンガーボルトが.ロープいっぱいまで伸ばしたかったが,足元も安定しているのでここでピッチを切る.
2P 階段状で登りやすいが,やはりプロテクションは決めづらい登りが続く.チムニー状の岩の下にまたきれいなハンガーボルトがあったのでここでピッチを切った.
3P チムニー状の岩が60m近く続く.流れが悪いので途中でピッチを切ろうとしたが,(ピッチを切って青白ハングをリードするつもりだった)狭く支点も心もとないので青白ハング下までロープを伸ばした.ここはハンガーボルトはないが,クラックが豊富なのでカムとナッツで安定したビレイ点を構築できた.
4P 本日のハイライト,青白ハング.1手ごとにあるんじゃないかというくらい残置スリングが多数垂れ下がっている.松高ハングとは異なり,高度感満点のハングだった.重荷と不安定な岩にビビり,情けないがスリングをつかみつつハングを超える.ハングちょいうえと,バンド上にハンガーボルトがあった.
5P バンドのトラバース~カンテを登る.難しくはないが支点の取りにくく高度感満点のトラバースにビビり,カンテを越えて浮石だらけのテラスに.相変わらず岩が脆いのでクラック内の泥を掻き出しハーケンを打ち込み,カムと残置も使いつつピッチを切る.
6P フェース~ハイマツ登り.60mいっぱいまでロープを伸ばし,さらに少し登ると緩傾斜帯へ.
北尾根を登るとまた時間がかかるので,今回は5,6のコル経由で下降した.

05:00 奥又白池
06:30 北条=新村ルート取付き
11:00 北尾根縦走路
13:30 奥又白池

当初の予定では前穂東壁:北壁~Aフェースの登攀や,滝谷へ移動してのクライミングも考えていたが,天候悪化によりクライミングはここまでとし,5日目に下山.明神橋手前でツキノワグマと遭遇した.
我々が居る間,奥又白池には他に誰も来なかったが,4峰正面壁は最近でもクライマーが訪れているようだった.(踏み跡は探せば見つけられたし,A沢下降用の残置懸垂支点もきれいなものが多かった.)
東壁へはC沢を詰めてアプローチできるかなとも考えていたが,落石が非常に多く,涸沢ー3,4のコルからのアプローチでないと厳しいかな・・・
(参考:改定 日本の岩場 白山書房)

予定通りのルートは登れなかったが,前穂高の岩場を知ることができ,充実した山行だった.

記:武田

T1へ向かう
松高ルート1P
奥又白池に映る前穂高北尾根
奥又白池BC

鳥帽子沢奥壁南稜~国境稜線

 6月7日,武田,瀧川,他1名で一ノ倉沢 烏帽子沢奥壁南稜~国境稜線~谷川頂上を繋げて歩いてきた.

 金曜夜に自宅を出発し,AM1:00頃インフォメーションセンターに到着.2時間ほど仮眠してから出発.人気ルートのため渋滞を避けるため早めの出発としたが,既に駐車場では他のクライマー達も準備を始めていた.急いで一ノ倉沢を目指す.
 テールリッジを目指し設計を歩いていると,100mほど先にツキノワグマが見え,一瞬熊敗退という言葉が頭をよぎるが,衝立前沢方面へと消えていった.ビビりつつもテールリッジへ向かう.
 なんとか南稜テラスへ一番乗りで到着し,前半は瀧川さんがリード.最後2ピッチを譲ってもらい武田がリードした.
 難なく終了点へ到着し,そこからは岩混じりの草付きでロープを使いつつ一ノ倉尾根へ.この日は南稜から国境稜線を目指す人が他に2パーティーも(!)おり,すぐに追いついてきた彼らはロープを使わず尾根を目指していたため,ここで我々を追い抜いて行った.(地元の山岳会とのことなので初めてではないのかも?)我々は初めてなので安全第一,ということで稜線へ出るまではロープを使った.
 一ノ倉尾根へ出てからは藪漕ぎをしつつ比較的明瞭な踏み跡を辿る.5ルンゼの頭は先行パーティーもロープを出しており,順番待ちをしつつロープをつける.そこまで難しくなさそうだったためアプローチシューズで登ったが,浮石と不安定な草付きが多く,緊張する.その後もコンテを交えつつ最後は背丈弱の藪を漕ぎとなった.国境稜線へ出ると緊張が解け,安全圏に出た安堵感で思わず倒れこんだ.
 下山はロープウェイの予定だったが,ここまで来たら自分の足で降りたいと感じたので,瀧川さんを説得し西黒尾根を下降.ツルツルの岩と鎖場で疲れたが,PM16:00頃には下山した.
 クライミング,藪漕ぎ,コンテ,稜線歩きとアルパインクライミングの楽しさを詰め込んだ1日となった.

【時間】
03:40 インフォメーションセンター
04:20 一ノ倉沢出合
05:40 南稜テラス
08:50 南稜終了点
10:00 一ノ倉尾根
10:50 5ルンゼの頭基部
12:20 国境稜線・一ノ倉岳
16:00 登山指導センター

記・武田