南稜フランケ

ずっと登りたいと思っていた「南稜フランケ」を登ってきた。
天気予報を見ると、6/3~6/6は晴れそうなので、乾くことを期待して6日に行くことにする。
出合に着くと、とても良い天気だ。
雪が少なく、出合からしばらくは右岸の巻き道を行き雪渓に下りた。
テールリッジ末端のシュルンドは問題なく通過。
出合から1時間で中央稜の取付に着き、烏帽子沢奥壁のバンドを歩き鎌形ハングの右端で、登攀の準備をする。

グレードは体感・・・

1ピッチ目(Ⅳ+・40m)
右のカンテを越えてフェースを登り、草付の凹角手前まで。
ザ・逆層って感じで意外に悪い・・・
2ピッチ目(Ⅳ+・40m)
左上する草付のランぺ(今は言わないかな・・・)からハングの切れ目を目指して右上しビレイポイントへ。ビレイポイントに上がる箇所が、岩が脆くて怖い。
3ピッチ目(V・40m)
ハング下のトラバースから、岩は硬いがホールドが細かいフェースを登り大テラスへ。
トポでは「Ⅴ+」になっているが、三つ峠の大根おろしが「Ⅴ+」ならこのピッチは少し易しいと感じた。
4ピッチ目(V+・30m)
大テラスから左に見えるフェースを登り、バンドを左へトラバースしカンテを越えてYCC左ルートの物と思われるボルトが見えるテラスでビレイ。
カンテを越える箇所が悪く感じた。
5ピッチ目(Ⅳ+・45m)
左上する草付バンドからカンテを直上。
南稜の馬の背の上部に出た。
6ピッチ目(Ⅲ・20m)
南稜の最終ピッチ取付きの10mくらい下に懸垂ポイントが有ったので、そこで終了にして下降した。
ルート全体にプロテクションが少なく、ルートファインディングに悩む場面も有ったが、大きくルートを外すことは無いと思う。
ほぼ岩は硬いが、部分的に脆い箇所も有りリードは慎重な行動と集中力を要求される良いルートだと感じた。
何といっても烏帽子沢奥壁にあって、これだけ草付が少ないのは素晴らしい!
私が3歳の時に初登された「南稜フランケ」、評判通りの良いルートだった。

記 熊谷

GWの滝谷第三尾根

古~い友人に誘われ、GWの滝谷へ行ってきた。
目標は第三尾根、たぶん自分は登っていないと思う。
滝谷の記憶はかなり曖昧なので、「穂高岳の岩場」や数冊のトポを読み、ネットで最近の記録を調べるが、どうも最近の記録ではスッキリと登った記録が見当たらない・・・
地震の影響で、穂高岳周辺の岩場はかなり変わってしまっていると聞いている。
屏風岩の扇岩が無くなるくらいだから、滝谷も相当変わっているだろう・・・

天気予報が好転してきたので、5/3~5の日程に決定し、5/2の夜に沢渡へ向かう。
本谷橋から上は雪渓を谷通しで登った記憶があったのだが、今年は右岸の夏道沿いを歩いた。これも温暖化の影響か。

5/4、午前4時前に涸沢を出発、6時過ぎに松涛岩と北穂南峰のコルに到着。
滝谷側を覗くと、意外に雪があり、少し安心した。
が! この傾斜を下るのかぁ・・・
ということで、C沢左俣を1時間以上のクライムダウンした。
やっとのことでC沢右俣との合流点に着くが、右俣側は常に自然落石が落ちている。
なるべく第三尾根側の落石のフォールラインから外れたところを登り、赤いガリーに入った。
写真は合流点から見たC沢右俣奥壁方面(グレポンは消失?)
赤いガリーは2/3ほど雪が有り、岩が出てきた所でロープを結んだ。
出だしはアイゼンで登るには、かなり悪いスラブ。
落石が酷く、ハング下でビレイしないと命がいくつあっても足りないくらい・・・
尾根に出る5メートルくらい手前でロープがいっぱいになり、1P目を切る。
2P目はガレガレの尾根上を大きなスラブ状フェースに突き当たるまで行ってビレイ。
3P目はビレイ点から右へ、壁と突き出した岩の間を通り、C沢右俣側へ回り込む。
トポでは小ピナクルが有り、チムニー登りをして大ピナクル側へ移る、とあるが、
小ピナクルが無い???
被り気味のクラックをジャミングで越える。ハンドジャムが効くが、登山靴では厳しい(カム持ってきて良かった)
その後も、かなりヤバいトラバースをして、T3とおぼしきコルに到着。
もう1ピッチ、ドームを左に見ながら直上して、たぶんT2
そこからドームを巻くように右上、5ピッチくらいで縦走路へ出た。
何とか生きて帰れそうだ。
雪が腐り歩きにくくなった主脈を歩き、北穂沢をよれよれで下って涸沢へ帰還した。
天候に恵まれ、充実した登攀が出来た。
あと何回、この景色が見れるだろう

記 熊谷

瑞牆山でのマルチピッチクライミング

最近、瑞牆山(と小川山)で何本かマルチピッチクライミングを行なったので、備忘録として・・・
9月17日 晴のち曇り
十一面岩奥壁、恋するモーメント 4P 5.10b(PD)
佐藤裕介さんがロクスノ95号で紹介したルート(初登は横山勝丘、千裕夫妻)
少々ふざけたネーミングだが、内容は良かった。
1P Joyful Momentの1P目の途中から直上するクラックを登る。
   パッと見にはプロテクションが取れなそうに見えるが、登ってみれば
   スモールカムが何ヶ所か決まる。クラックも易しい。
   クラックが終わり、スラブを右上したところで切りたくなるが、
   1P目の終了点はその上の少々汚いクラックを登った回廊のような
   ところが正解(岩にロープが巻いてある)
2P 短めのワイドクラックを3本続けて登るピッチ
   最初のワイドクラックは出だしが少々登りづらい。
   2本目は右側のフェースも使え易しい。
   3本目は一番手応え有り・・・
3P なかなかトリッキーなスラブをプロテクションに悩みながら
   トラバースから直上する。
   スモールカムが有効
4P Joyful~の最終ピッチと同じ
使用カム:キャメロット#0.2~#0.75・#2~#4 各2 

9月22日 曇り時々小雨
小川山 屋根岩2峰セレクション 6P 5.9
天気予報はかなり微妙だったが行ってみた。
2ピッチ目のスラブの終了点で少し降られたが、何とか持ってくれた。
5ピッチ目のトラバースは濡れていて嫌らしかった・・・
吉村君、お疲れ様でした。

9月30日 晴のち時々曇り
十一面岩左岩壁 山河微笑~奥壁 Joyful Moment 継続
山河微笑  5P  5.10a
1P 今日は乾いていて快適!
2P 大チムニー、左カンテへ出ず直上
3P 木登りからハンドクラック、ワイド気味のところが
   ヘルメットが邪魔・・・
   ここまで吉村君リード、頑張りました!
5P 今回もRP出来ず・・・このピッチ本当に苦手・・・
   フォローの二人はノーテンション(教えて欲しい)
カム:キャメロット #0.75~#4 各2+#0.5・#5 各1

Joyful Moment  4P 5.9
2ピッチ目が少々脆い事以外は快適
カム:キャメロット #0.5~#4 各2

10月1日 快晴
十一面岩左岩壁~正面壁 黄金の風 10P 5.10b
こちらも佐藤裕介さんがロクスノ95号で紹介したルート
ベルジュエールよりもはるかに時間がかかり、内容も濃い!と紹介されており、少々緊張しながら取付いた。
1P 山河微笑と同じ
2P 秋一番と同じ
   下り気味のトラバースを終え、直上が始まる所でやっと1本目のボルト    
   が有る。核心は2本目のクリップを何とか伸び上がってクリップした
   後の部分。25メートルでプロテクションは、この2本のみ・・・
3P このピッチも秋一番と同じ
   5.9だが、なんとも出だしが難しく、途中もプロテクションがあまり
   取れないオフィズス・・・
4P やや右へルンゼの踏跡をたどり、途中から秋一番の踏跡を右へ分け
   左の踏跡を頭上の大チムニーを目指して上がる。
   途中にワンポイントの5.8有り。
5P 大スクイズチムニー
   胸が厚いと途中で引っ掛かる、そう言うサイズ・・・
   大きいサイズのカムは使えません。
   プロテクションは奥のクラックへ#0.75~#2が使える。
   私は右差しを勧めます。
6P 正面ではなく右側の、これもワイドクラックを登る。
   プロテクションは出だしに1個取れるが、後はノープロ・・・
   クラックを抜けたら少しクライムダウンして、モアイの頭を
   ベルジュエールの1本左のクラック(凹角)を目指して回り込む。
7P 見た目より登りずらく初めは左上するハンドクラックだが、
   出口はまたもワイド登り・・・
8P 綺麗なクレセントクラック!
   これがクライミングだよ!と言いたくなる、とても気持ちの良いピッチ
   あっという間に終わってしまうのが残念。
9P 大きな岩をいくつか越えて、十一面岩の頂上直下へ。
10P 何となく右のクラックは脆そうだったので、ベルジュエールの最終ピッ
   チのクラックを登った。
   昨日と今日の疲れが出て、やや被り気味の5.8はきつかった。
   とても気持ちの良い十一面岩のてっぺんで終了!

カム:キャメロット #0.75~#3 各2・#0.3~#0.5・#4 各1

山河微笑2P目の大チムニー

 

山河微笑3P目

 

山河微笑5P目 苦戦するワタクシ

 

奥壁頂上

 

とても気持ちの良いクレセントクラック

 

末端壁基部から見た影瑞牆と八ヶ岳

 

 

鷹見岩

9月15日、奥秩父の瑞牆山と金峰山の間にある「鷹見岩」のマルチピッチ、南山稜を登ってきた。
以前、日登のメンバーが行っていたが、その時には特に興味を持つことは無かった。
今回、GWに西上州へ行ったメンバーの一人に誘われ、ちょっとググってみると、あら結構面白そう! となり、他2名も同行、計4名(2パーティ)での登攀となった。

瑞牆山荘から富士見平小屋経由で金峰山へ向かい、鷹見岩への分岐から少し歩くと、ネットで見たとおりのテープがあった。
しかし、そこから右へ降りて行くと踏み跡はあるがテープが見えない。
しっかりとした踏み跡は右へ右へと続いている。5~10分くらい踏み跡をたどるが、これでは左に見える鷹見岩からどんどん遠ざかってしまう。
踏み跡に見切りをつけ、登り返すとボルダーが数個ある場所でテープを発見、そこに不要な荷物をデポして、あとはテープや踏み跡、フィックスロープに導かれ鷹見岩の裾に沿うように30分くらいで、フィックスロープのある取付きの洞窟に着いた。

自分は奇数ピッチ、パートナーは偶数ピッチをリード。
6ピッチ中4ピッチが5.10台で、なかなか充実。
特に2ピッチ目の長いハンドサイズのクラックからスラブのピッチと、5~6ピッチ目のフェースからスラブは、そこそこの難しさが続き楽しめる。
終了点から鷹見岩の頂上までは岩稜や、部分的にロープが欲しい箇所もあり、1時間ほどかかった。
頂上からは、金峰山側には大日岩等の岩峰がいくつも見られ、反対側には飯盛山や瑞牆山の岩峰が、いつもと違う角度で見え、とても素晴らしい展望だった。

参考文献:ROCK&SNOW #70

1ピッチ目スタート (5.10+)
5ピッチ目終了点直下 (5.10)
5ピッチ目、フォロー (5.10)
鷹見岩頂上にて

北関東、岩塔巡り(平成の終わりに昭和へタイムスリップ)

西上州の岩場は脆いと聞いていたので、自分から行こうと思ったことは無かったが、今回、友人に誘われて、4月27日~29日、西上州から足尾へ岩塔を巡るクライミングツアーへ行った。
26日の夜、雨予報の中を群馬県甘楽郡南牧村(かんらぐん なんもくむら、と読む)へ向けて還暦前後の3人で出発。
南牧村は高齢化日本一、消滅可能性も日本一の村だ!
まさに我々にピッタリの山域である。
道の駅で夜を明かすが、朝まで雨が降り続いている。
予報では6時頃には止むはずだったが、止む気配は無い。
仕方ないので(今日は脆い岩を登らずに済みそうなので、内心ほっとして)周辺の偵察と決める。
じじばば岩と高立一本岩を見に行こうという事になり、下仁田へ戻ってから254号線を西走し、じじばば岩はアプローチが遠そうな上、登れなそうなので、遠くから眺めるだけにして、高立一本岩を目指す。
これは凄い!
なぜ、これを観光に使わないのか不思議なほどインパクトが有る。

高立一本岩

あいにく(ラッキーなことに)雨で濡れているので、今日のところは取付き偵察で許してやった。あー残念・・・
近くの岩塔をもっと見ようという事で、妙義山へ転身
筆頭岩(ひっとういわ)へ向かう。
おー、これも凄い! しかも乾いて来ている。
これは登らなければならないだろー!
取付きは駐車場からわずか5分!
ルートは写真右のリッジ

筆頭岩

28日
今日は朝から晴天だが、よく冷え込んだ。
本日はメインディッシュの毛無岩の登攀
道場という部落のどん詰まりの神社の横から歩き、約2時間で取付き。
西上州らしい、脆い脆い岩登りを7~8ピッチで毛無岩の頂上へ抜けた。

毛無岩全景
最終ピッチのクラック
毛無岩の頂上

最終日の29日は足尾へ移動。
松木沢ジャンダルムへ向かう。
松木沢は初めて訪れたが、ここも凄い風景だ。
昔よりは緑が増えたらしいが、今でも死の谷の様相を残している。
冷たい渡渉をしてジャンダルムの取付きへ向かう。
渡渉してから取付きまで、わずか15分。
直上ルートと思われるチムニーに取付く。
中央バンドまで3ピッチ、上部岩壁が2ピッチの登攀だった。
ここは昨日までの岩と違って、浮石が物凄いことを除けば、岩は硬くて快適だった。
帰りの渡渉が憂鬱だったが、懸垂下降で取付きへ。
我々は50mロープだったので、懸垂の支点まで数メートル届かないピッチが2回あり、クライムダウンで怖い想いをしたので、60mロープを推奨します。

ジャンダルム全景
終了点から松木沢を見下ろす
渡渉

クライミング、西上州や足尾の町、すべてが驚きと感動と懐かしさに満ちた三日間だった。
いやー、日本は広い!
いつか高立一本岩を登りに戻って来たいと思いながら帰京しました。

記 熊谷

鹿島槍ヶ岳東尾根

3月31日に単独日帰りで鹿島槍東尾根に行ってきました。

好天に恵まれ、残雪期の山を楽しめました。

前日30日の夕方、高瀬川沿いの道を北上すると正面に鹿島槍が見えてくる。

久しぶりに山に対峙してドキドキするのを感じた。

早朝(深夜?)1時前に大谷原を出発(大冷沢の橋まで車で入れた)

最初から雪の上の歩行。

15分ほど歩くとS字カーブの先の道路左側の注意書きの道標と、右側の急斜面の木にピンクテープが巻いてある東尾根の取付きに着く。

登り始めは雪が無く、踏み跡もあいまいで木を掴むなどして、しばらく登ると雪が出てきて幾分歩きやすくなった。

十四夜の月明かりに照らされて、ひたすら急登を行くと、ぱっと周りが開けて一の沢の頭に出る。

ここでアイゼンを履き、右側の雪庇に気をつけながらアップダウンを繰り返して、6時前に第一岩峰の基部に到着。ここでハーネス、ヘルメットを装着。

幕営した跡が三張り分あった。

ちょうど第一岩峰に取付いたばかりの3人の先行パーティがいるが、横から抜かせていただいた。夕べは第一岩峰の基部に泊まったそうだ。

第一岩峰の雪壁は締まっていて、とても快適。

ここを抜けたところから第二岩峰までの左上する雪壁が露出度が高く傾斜もあり、一番緊張した。

第二岩峰基部には7時着。

第二岩峰はチョックストーンのあるチムニー部が核心だが左側にアイゼンの爪が掛かる所があり難しくは無い。Ⅳ-くらいか。

ここを抜けると後は頂上まで雪壁とナイフリッジになり、難しい箇所はない。

8時過ぎに鹿島槍北峰に到着。他には誰もおらず、3人パーティーもまだ見えない貸切りの頂上をしばし満喫。剣岳がカッコイイ。

まだ時間も早く、雪面がクラストしているので、吊り尾根最低鞍部から北股本谷を下降する。

下り始めはかなりの急斜面。1時間ほど下るとデブリ帯を抜けて一安心。

しかし鎌尾根の末端あたりから膝くらいまでもぐるようになり、時間が掛かった。

これから鎌尾根へ行くと言う学生風の3人組と会ったが、こんな時間から雪崩の可能性がある沢筋に入って行くと言うのが、ちと引っかかった・・・

10時半ころ、赤岩尾根末端部を通過、12時前に大谷原へ戻った。

午前10時頃を過ぎると雪が腐って歩きにくいと言う話を聞いていたので、早い時間に歩き始め、雪が締まっている内に高度を稼いだのが良かったと思う。

締まった雪壁と花崗岩のミックスがとても楽しめました。

熊谷

第一岩峰

第二岩峰

第二岩峰上からの爺ヶ岳と槍穂高(右奥)

 

南峰(左)と北峰

北峰頂上からの南峰と剣岳

北股本谷と鎌尾根方向を振り返る

下山後