前穂高岳の岩場 松高ルート・北条=新村ルート

お盆の連休を利用し,武田他1名(会外)で前穂高東面の岩場へ行った.

初日は上高地から奥又白池まで.奥又白池は前穂高東面の展望が非常に良くルートの観察ができ,快適な場所であったが,沢からは昼夜を問わず落石の音が響いていた.(焚火跡が残っていたのが少し残念・・・)

4峰正面壁

2日目は4峰正面壁,松高ルート~前穂北尾根を登った.
奥又尾根を登り,岩が出てくるあたりでトラバースできそうな踏み跡を見つけてそれを辿る.A沢のガレのトラバース,B沢の雪渓をトラバースし,C沢CS滝まで詰めた後T1へ.不安定なガレに苦戦し,池から2時間半程度.落石も頻発しているので非常に神経を使った.
以下,松高ルート詳細

1~2P 草付きのルンゼを辿りながら高度を上げていく.松高ハング下までトポだと3ピッチだったが,2ピッチで登った.
3P スリングの垂れ下がる松高ハング(というより垂壁?)を越える.その後の凹角の方が悪かった気がするが,特に不安に感じる難しさではなかったと思う.
4P いきなりハング越えから始まり,ハンドサイズのきれいなクラックの走る岩を右から回り込んで越えてもう少し登った.
5P 簡単な岩登りをして緩傾斜帯に入り,ロープを目いっぱい伸ばす.その後は緩傾斜帯の踏み跡を辿り北尾根へ.
そこからは北尾根を継続して登り,A沢,奥又尾根を下降したが,ここでかなり時間を使い,途中からヘッデン下山となった.特にA沢はガレと雪渓を懸垂しつつの下降となり,時間を取られた.

06:00 奥又白池
08:30 松高ルート取付き
12:00 北尾根縦走路
16:00 前穂高頂上
19:00 踏替点(2つ目)
19:30 奥又白池

下山が遅くなり疲労もたまっていたので,3日目は休息日とし,4日目は北条=新村ルートへ.松高ルートとアプローチがほぼ同じなので,迷うことなく1時間半程度で取付きへ.以下,ルート詳細

1P 凹角の草付きからフェースを登るが,松高ルートより岩が不安定で,プロテクションを決めやすい場所を探すのに苦労する.しかし,1P終了点にはピカピカのペツルのハンガーボルトが.ロープいっぱいまで伸ばしたかったが,足元も安定しているのでここでピッチを切る.
2P 階段状で登りやすいが,やはりプロテクションは決めづらい登りが続く.チムニー状の岩の下にまたきれいなハンガーボルトがあったのでここでピッチを切った.
3P チムニー状の岩が60m近く続く.流れが悪いので途中でピッチを切ろうとしたが,(ピッチを切って青白ハングをリードするつもりだった)狭く支点も心もとないので青白ハング下までロープを伸ばした.ここはハンガーボルトはないが,クラックが豊富なのでカムとナッツで安定したビレイ点を構築できた.
4P 本日のハイライト,青白ハング.1手ごとにあるんじゃないかというくらい残置スリングが多数垂れ下がっている.松高ハングとは異なり,高度感満点のハングだった.重荷と不安定な岩にビビり,情けないがスリングをつかみつつハングを超える.ハングちょいうえと,バンド上にハンガーボルトがあった.
5P バンドのトラバース~カンテを登る.難しくはないが支点の取りにくく高度感満点のトラバースにビビり,カンテを越えて浮石だらけのテラスに.相変わらず岩が脆いのでクラック内の泥を掻き出しハーケンを打ち込み,カムと残置も使いつつピッチを切る.
6P フェース~ハイマツ登り.60mいっぱいまでロープを伸ばし,さらに少し登ると緩傾斜帯へ.
北尾根を登るとまた時間がかかるので,今回は5,6のコル経由で下降した.

05:00 奥又白池
06:30 北条=新村ルート取付き
11:00 北尾根縦走路
13:30 奥又白池

当初の予定では前穂東壁:北壁~Aフェースの登攀や,滝谷へ移動してのクライミングも考えていたが,天候悪化によりクライミングはここまでとし,5日目に下山.明神橋手前でツキノワグマと遭遇した.
我々が居る間,奥又白池には他に誰も来なかったが,4峰正面壁は最近でもクライマーが訪れているようだった.(踏み跡は探せば見つけられたし,A沢下降用の残置懸垂支点もきれいなものが多かった.)
東壁へはC沢を詰めてアプローチできるかなとも考えていたが,落石が非常に多く,涸沢ー3,4のコルからのアプローチでないと厳しいかな・・・
(参考:改定 日本の岩場 白山書房)

予定通りのルートは登れなかったが,前穂高の岩場を知ることができ,充実した山行だった.

記:武田

T1へ向かう
松高ルート1P
奥又白池に映る前穂高北尾根
奥又白池BC